恒川 光太郎 ・スタープレイヤー よんで
掃いて捨てるほどある異世界転生の話しでも、才能がある人が書けばこうなるのかと感心させられた作品。
≪ 路上くじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。
そこで10の願いが叶えられる
「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、
人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて・・・ ≫
ラノベ系なろう系のを多々読んだ訳でもなく同系統アニメを十分よく見た訳でもないのだが、これ読んでみてやはりちょっと違う、とは思った。
話は最初からサクサク進み、その手際も商業作家だけあるものなのだが、最初にゾロリと来たのが主人公の過去に関わるリアリズム系インパクト。
なるほど、れっきとした作家らしくこう来るかと。
それでこの小説はこう攻めて来るのかと思っていたら、それも有りつつ踏まえつつ、人の願いが回数限定で叶う世界の楽しさ難しさを描きながら、ファンシーが政治や政争にまで及ぼうとして、遂には結構に相当なファンタジーがドカンバカンと炸裂する。
現実の代わりにダラダラと異世界でじゃれたりボーケンしたりする話も、内容によってはずっと浸っていたいほど楽しくて心地良いものだが、お約束ごとだけでは無い自由に奔放でもリアルな小説世界、確固とした世界を鮮やかに描き切ったものを読まさされると、改めて小説自体の楽しみの深さを味わえたと、そんな風にも思いました。
とても面白かったです。