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バッキー井上 『いっとかなあかん店 京都』

情報収集のためだけでなく、食べログや飲食街の情報誌を読むのは、何かしら飲みに行ったり食べに行ったりした楽しげな空気や気分を感じたい、そんなのが有ると思う。

 

京都グルメのー冊のような佇まいの本だが、それはそれとして間違いないのだけれども、店舗の物理的数値や決まり文句の美味しい彼是以外の、自分と酒の今や過去を語る饒舌が溢れて、数々写真や頁見開きで臨場感ある魅力的なショットの幾多有るにも関わらず、文章は負けていない。

 

普通のエリアグルメ本とは一線を画した、人や街や店の姿を画いた本。
著者と店や街との立ち位置を例えて見るなら、山口瞳の行きつけの店に近いか、そんなかもか。


何も文章が似ている訳でも小説らしさとか山口瞳ばり人情味とかがこの本にある訳でもない。
あれほど密接でも濃密では無いし、あっさりしてフットワークも軽いが、人や飲む場所との距離感がちょっと似ているかなと、思ったりした次第。

 

確かに、お店紹介に自分語りは要らないし過去語りもなんじゃらほいだろうけど、ただその店に自分がいて何度も幾夜も訪れていて私の年月に徘徊経路の一つにもなっている様が刻まれているのだったら、私を語ることがその店を間接的に間接照明のように語っていてもおかしくはないし、事実そのとおりの一冊に仕上がっている。

 

お手軽な食べログレビューのグルメで、一回行って食べて見るだけの一回の経験値がいくら豊富であっても、それらとこの本を同列に扱うべきものではないだろう。

 

この本には著者の写真、顔や表情もよく写っている。
目力の強そうな、ちょっと圧力のある瞳だが、勝手な推測を云えばこれは彼が圧力キャラなんぞではなくて、酒を呑みすぎて呆然として目を見開いている状態これが余りに永く幾夜とも続いているので、酒場に行くと自動的もしくはもう普段からそんな顔に成ってしまったのだと、テキトーかつ無責任に推測をする。


本書のなり立ちについて思っていたのは、関西雑誌Meets Regional 連載のマトメと抽出かなと。
でも、そうではなくて全国グルメ誌dancyu のマトメ。

 

dancyu に連載されていたとは知らなかった。
でも同じ店のことを書けば同じことばが紡ぎ出されるのは自然の生業。
馴染みがあってリズムのある文章は、紙面のあちらこちらとか雑誌単行本の違いになど左右されない。
dancyu編集のライターを選ぶ目は確かなようだ。

 

いっとかなあかん店 京都

いっとかなあかん店 京都