ふしぎの国のバード 2巻 <佐々 大河> ビームコミックス(ハルタ)
日本に来た、という状況から、いよいよ主な目的である日本奥地へと向かう。
これはある意味、今の日本人にとっても未知の紀行となる。
江戸京大阪、街道沿いの街と違って、日本人の記録にほとんど残されていないし、後世において実態が小説とかに書かれることも余り無かった。
そして、コミックでは原作に見えない部分を果敢に描こうとしている。
会津道の情報収集で部屋中に旅案内や地図を広げたり、温泉の情報だけでなく自ら浸かりに行こうとしたり、皮膚病の人達の前に立ちすくんで次の一歩を踏み出したりと、原作に書かれていないもの、原作者バードの視点上見えてこないもの、そしてコミック作者がバードならこうしただろうと、土人のような日本人を前にして願うような気持で薬について語らせた事。
今回の巻では道行も厳しくなってくる。
東海道や中山道とか、規制が多いにせよ当時のメインストリートとは違って、人がどうにか歩けるだけの道に近い。
山中の道は雨が降れば道の中に水流が走り、豪雨では道が川になったりする。
木の根が道を横切り脚を取る。
泥濘は中々乾くことが無い。
本書とは関係ないが、ここで語られる会津道は明治維新での会津戦争で官軍が北上していった経路の一つ。
白河とか磐梯とか長岡とか、そういう大規模な戦場では無かったので言及されることは少ないが、この道筋あたりでも一か月余りの戦いがあった。
登場キャラが時々顔を赤らめたりするのは、未だに疑問な描写だとは思うが、商業コミック雑誌連載でもあるし、此の程度仕方が無いのかもしれない。
コミック全体では前作一巻より力を発揮してきた感じもある。
歴史ものといえども、全く新しい分野のコミックは難しい。
ぼんやりしてると気づかないが、コミック化とは旅行紀行を絵にすることでは無いようだ。
そういうアプローチもあるだろうが、所謂コミックにはならない。
キャラを動かさなくてはいけない。
例えばキャラの、5分10分といった短い時間の、動きと言葉と周辺を絵で表現しないといけない。
紀行文は著者バードの目から見た世界の現状表現だが、コミックでは世界から著者バードの現在進行形の姿の表現。
紀行文では日本を描いているが、コミック作者はバードを描かなくてはいけない。
そのために小さな淑女とか、時代劇でもあまり見られない女性馬子をキャラ設定しバードに絡ませる。
田舎での蚤虱がたかる不潔な部屋描写はちょっと笑える。
これは難しくて、描きすぎると読者に不快感を与えるし、しかし元々不快な状況でもあるし、その程度具合なのだが、やや下手糞に画いたこの位が適切であったと思えるくらい。
1巻読み終わったときは次作読むかどうか疑問だったが、2巻を買ってよかったと思えました。
3巻も期待します。
元々面白い紀行なのだから、やり過ぎない程度にバードを動かしてほしいもの。
ふしぎの国のバード 2巻<ふしぎの国のバード> (ビームコミックス(ハルタ))
- 作者: 佐々大河
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン
- 発売日: 2016/05/14
- メディア: Kindle版
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