ラノベ2題、放課後、薬屋
『 過疎の地方都市。市内唯一の高校の天文部員、祥兵、雅樹、マリアは、顧問の杏先生と共に夜空が墜ちるような流星嵐を観測した。
翌日、彼らの前に現れた転校生の悠美。入部希望だという彼女は「岩江の大人達が隠す地球の秘密を知りたい」と微笑む。
地下の大空洞を皮切りに、次々明らかになる鄙びた町の真実。
笹本祐一、ハヤカワ文庫初登場 』
この作品でも都市伝説をちょっと取り上げて、現実を上手くシフトさせるのに使っている。
転校生は宇宙人?みたいなベタな話でもしっかりと読ませます。
プラネタリウムを使って宇宙の概要を説明する場面なんか、ラノベといえども描くときには小説として丹念に堂々と描き綴ります。
この辺りベテラン作家の余裕を感じましたね。
モーレツ宇宙海賊でも女子高生が云々でもロケットや宇宙船描写は本格SF並みでしたしね。
今年には5年ぶりに宇宙海賊のノベル新作が出るみたいで、これも楽しみです。
薬屋のひとりごと (日向 夏)
『 猫猫(マオマオ)は花街で薬師をやっていたが、とある事情にて後宮で下働き中。
そばかすだらけで、けして美人とはいえぬその娘は、分相応に何事もなく年季があけるのを待っていた。
短命な御子たちの話を聞いた猫猫は、興味本位でその原因を調べ始める。
人間には興味がないが、毒と薬の執着は異常、そんな花街育ちの薬師が巻き込まれる噂や事件。
稀代の毒好き娘、が今日も後宮内を駆け回る。 』
文章がシンプルで上手いですね。
話とキャラを次々とどうなるのかと、派手な話でなくとも興味を持って繋げる手際は巧みです。
コミックで言ったらシンプルな線画だけなのに、それが力強くて惹き付けられるみたいな。
ラノベによくある饒舌文でなく普通の小説体だけど、作者は結構な手練だと思います。
数巻をサクサクと、でもじっくりと読んで愉しかったです。