灼熱の小早川さん (ガガガ文庫) 田中 ロミオ
田中 ロミオ さんのは、アウラに次いで読むのは二作目だけど今回も面白かったです。作者の人の見方がしっかりしていて、空疎にならないから読んでいてダレないてす。
佐藤良子にせよ小早川さんにせよ、痛いというか不愉快になりかねないキャラを、その痛い不愉快部分も描きながら、1人の女の子として等身大に描くのは大した力量。
委員長キャラの栄光?と挫折の物語のなのだが、ラノベではなく小説になっている、という書くとラノベに失礼か。
無気力でクラス崩壊予感のあるような、こんな雰囲気は実社会の職場でも、ちょくちょくあるもので、実際の所そんな職場の立て直しは難しく、大規模移動による人員の入替えでリセットすると云うのが社会でのやり方。
作者のブラックな所の描き方というのが、ブラックを柔らかい衣に包みながら、でもブラックであることを明確に主張させて隠したりしない、そんな手腕がいいです。
表現に「お金を」と書いたところが一つ眼に止まったのだけど、AURAでも終盤近くに札束がちょっと出てくる場面があったけど、金銭を使った比喩表現は今回も上手い。
文化祭あたりから、いろいろ揺さぶりがあって、読んでる方もああっと揺さぶられたりする。 ラストに付いてネットレビューではファンタジーだとかいう評もあったけど、そうではなかろう、最初から地道な伏線もあり、ラストのリアリティを担保する強力強烈と巧妙陰険は十分表現していた。
ラストでは、そのベクトルが理念拡散から個別集中に変っただけ。
ただ、ラスト表現のボリュウムは不足だったと思う。もう少し個別に太く厚く描いて欲しかったのが、少し残念な所だった。
全体としての読後感としては、ストレートの強い直球を受けたような、そんな感じでした。でも普通の真面目なストレートな小説では無いですよ、リアルの痛さやトラブルや変な空気を軽妙に面白くさばいて進行させた、田中ロミオ的な直球ではないかと。
こうなると、人類衰退はきっと読むと思います。 アニメ良かったし