籐の枕
日帰り温泉やスーパ―銭湯なんかに良く置いてある中空のカンタン枕。
けっこう使い心地がいいので欲しかった。
ので、今回アマゾンで入手。
5年ほど前にも探してみた時は、Amazon出品が見つからなかったのでニトリ竹の枕で代用した覚えがある。
みなさんもAmazonで購入希望があったんでしょうね。
これ銭湯なんかで使っていた時は、プラスチックかビニルを紐板状にして編んでいるものとばかりに思っていたが、実際に購入して手に取ってみると籐100%。
白いべらっとした感じが、きっと合成ものに違いないと思い込んでいたが、籐の着色もしくは脱色したものなんですね。
嬉しい誤算です。
竹の枕も冷たい肌触りが魅力だけど、やはりもっと夏も盛りになると竹の面すら熱を持ってき始める。
そういうときには、こういった格子の細かい、身体との接地面が少なくて中身が空のマクラは重宝する。
普段はホールドの機能的な枕を使ってるけど、暑くなりつつある季節、畳やフローリングに直接寝転んで、籐の枕に頭蓋を乗せるのは心地よい。
よき昼寝の友であり、これからは昼夜を問わずに頭を乗せることになりそうです。
羊と鋼の森、コンビニ人間
羊と鋼の森 2015/9/11 宮下 奈都
・2016年 本屋大賞
『 ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。 』
情緒的に過ぎるかと、最初は思わせた文章も、音楽と自然の広がり、北海道の森を比喩にしてクリアな形をとる『音』の表現には適切だった。
『音』とバランスを追い求める少年に、調律師、ピアノを取り巻く人々、音楽、旋律、森の記憶が立ち現れて去ってゆき、また出会う。
みずみずしい美しさを最後まで失わない音楽小説、記憶に残る佳作。
読書中、充実した愉しい時間を過ごせました。
芥川賞のラノベ化か?と思いつつ驚きながら読んでいたら、まあだいたいそんな感じではあった。
コンビニ風俗を軽く流し長ながら、BGMのようにするする流しながら、本筋もそこそこありで気楽に読めます。
筒井康隆が書いたらもっと面白くなった?
小説というより『文学賞』という社会事象のあり方について興味深かった。
こういう小説が、文芸誌や小説新潮の一編で掲載されても何ら不思議ではないが、芥川賞となると、へ~そーなのーと目をパチパチさせてしまう。
最後まで読み通せたから、商業作品としてのバリュウは勿論あると、そうおもいます。
さよなら、カルト村。思春期から村を出るまで. 高田かや 、著
軽いホワホワタッチにもかかわらず、予期に反してこの本は面白かった。
ヤマギシ村で生まれ育った生活をコミックで描いた作品。
カルト宗教?っぽい書物については、ここ数年で読んだものと言えば、宗教学者島田氏の新書とか、名高い村上春樹の1Q84ぐらいだが、こういった世界についてのみ言えばだけど、それらに匹敵するほど読み応えあった。
なんというか普通の魅力、カルトに対する偏見ありき勧善懲悪ありき批判ありき視点でなく、では無く、普通にそこで生きている人の確かな視点と感覚。
親から殆ど隔絶させた子供の生活など、カルトに対しての批判や疑問が無いわけでは、勿論無い。
ただ、その辺の批判疑問について、最近は特に気になる点があった。
『 ヒジャーブを着けて辛い思いをしながら、めげずに弁護士になりました」みたいなイメージだと思うんですけど、全然そんなことではないんです。』
『 そもそも個人的に偏見や差別を受けたという経験が全然ない。』
そんな女性が、差別と偏見と闘って資格を勝ち取った記事をでっち上げられたもの。
毎日新聞としては、本人の感情はともかく、毎日新聞が決める正しい感情と正しい考え方の在り方はこうだからこう記事にした、のだろう。
このことを此の本についてダイレクトに当て嵌める事は出来ないが、著者がハードなこともホワホワタッチで描いていることに対して、やっぱりまだマインドコントロールが残っているとか、人格を否定するようなレビュを読むと、枠と形式に決められた表現でしか情報を受け取れないのだろうかと、残念な気持ちにもなるのだった。
著者は声高にカルトを批判する訳ではなく、村の生活を淡々と面白おかしく綴っているが、そう普通に見えても、村にいた当時から何も考えてい無さそうに見えていても、村を出る決断をする。
嵐の夜に脱出した訳ではない、普通に判断して親と話して、周囲や友人たちと別れ、近くの街で働き始めた。
著者はホワホワして天然だが、この本には力強い人の軌跡がある。
その決断こそ、そこに至った考えこそが、何にもまして強いカルトに対しての批判だろう。
そして文章にはしていないものの、おそらく両親に対する批判でもあったのだろう。
読んだ価値のあった本でした。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘I」 香月美夜
3月初め、試しに読んでみたのだが、面白くて次々と読みたくなって、gwには最終の刊行巻までたどり着いた。
『 幼い頃から本が大好きな、ある女子大生が事故に巻き込まれ、見知らぬ世界で生まれ変わった。貧しい兵士の家に、病気がちな5歳の女の子、マインとして……。おまけに、その世界では人々の識字率も低く、書物はほとんど存在しない。いくら読みたくても高価で手に入らない。マインは決意する。ないなら、作ってしまえばいい・・ 』
普通novelで異世界に行ったとしたら、かの地での冒険・魔法・ロマン・バトルという流れになるが、異世界へ行って?、実際に?一番のインパクトとして何があるかと言えば、冒険をする前に何よりも、異世界そのもの。
違う現実そのものが衝撃になるだろう。
目の前に見える視野、寝ている藁布団、土間のままの床、それらが全て今までの現実と違う。
この視点の身近さ、身の回りからよちよちと話を進める、何というか作者と物語との密着した寄り添い具合がこのシリーズの魅力。
異世界で病弱で発育不整の少女に転生した主人公は、中世風の劣悪な住宅環境に音を上げる。
土間で埃っぽいので掃除をしたら、病弱なので熱を出して寝込んでしまう。
天井に掛かっている蜘蛛の巣を払ってもらう。
まだ自分で排便できないようなので暴れる。
あれやこれやで書物とか印刷とかは縁の遠い世界。
ともかく頭が気持ち悪いので、落ち着いてきたころに冒険、ではなくてシャンプーを製造することに力を注ぐ・・・
魔法やバトルなど殆ど出てこない。
だがこの世界には魔力もあり、主人公の転生と身体にも大きくかかわっていた事が後々で分かって来るし、この設定は巧妙。
異世界転生にして図書fantasyであるのだが、転生場所が中世風兵士の娘なので、なかなか書物までたどり着かない。
この本の最大の魅力は、素直で緻密な異世界設定と足取り確かな物語進行。
病弱のせいもあり、世界は家の中や周辺ばかりから始まるし、狙った意外な展開のために記述視点を変えたり時系列を飛ばしたりしない。
一歩一歩とあゆみを進める、素直で強固な物語進行があり、小説技術の高度化と複雑化に慣れた私達には、反ってそれが凄く新鮮に感じた。
シリーズ2部では神殿が関係してくるが、神殿には愛人や売春めいたものも有るというリアリズムの背景も、そっと仕込んでいる。
シリーズ3部に向っては、だんだん貴族社会に係ってくるようになるが、貴族が形骸化せずに魔術と結びつくことで強大な地位を築いている設定描写の強固さ。
たしかにこれはどこまでもラノベなのだけど、ファンタジーも含めて周到にリアルに社会構成を描いているのは、作者の歴史知識の深さを窺えさせる。
といっても決して歴史薀蓄臭くなどない、知らぬ間にそういう設定にしているという具合。
また、異世界を思い通りに出来ずに、異世界特有の厳しい大人の世界にも向合い妥協せざる負えないリアル。
一般的な物語fantasyの創作における現実化、今の読者の現実道徳に沿ったストーリー解決に最後は持っていく事が多いのだが、此の本では、なかなかそうならないが故に異世界ワールドが面白い。
作者はネットで発表していた本書を、書籍化にあたって簡略化しないで欲しいと要望したそうだが、まさしくそうで本書の魅力は簡略化しない一つ一つにある。
本好きの下剋上?司書になるためには手段を選んでいられません?第一部「兵士の娘I」
- 作者: 香月美夜
- 出版社/メーカー: TOブックス
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
6月には新作が出る模様。
楽しみにしてます。
本好きの下剋上?司書になるためには手段を選んでいられません? 第三部「領主の養女IV」
- 作者: 香月美夜
- 出版社/メーカー: TOブックス
- 発売日: 2017/06/10
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
大阪ミナミでウロウロ、丸福丸亀モスバcraftbeer.
丸福珈琲本店。
洒落たビルの数々で高級喫茶展開している丸福珈琲だが、本店は大阪難波と日本橋の中間あたり、薄汚い路地裏にある。
ここの珈琲は濃厚でねっとりした味。
先日朝9時ごろに行ったら、席は空いていたが、客ほとんどは中韓旅行客だった。
やや高級路線?の値段設定のせいだろうか、中韓観光客といえども左程うるさくは無い。
皆さん、程よくモーニングを嗜んでおられた。
夜は普通に女性客も多く、日本人多くで賑わっている。
この4月から全面禁煙になったとか。
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270202/27001450/
丸亀製麺。
牛とろ玉うどん、並、690円。
釜揚げうどんに、すき焼き風の牛肉、とろろ芋をかけて半熟卵を乗せる。
会計した後、無料トッピングでネギを大量、ショウガを少々。
熱いうどんでも冷うどんでもいけます。
天気が良かったので冷やで頼んだ。
すき焼き風の濃厚さと、トロロ、半熟卵、うどんのコシ、バランス良くてガツガツつるつる食せます。
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270202/27065848/
モスバル。
モスバーガーの一部店舗、夕方からワインやビールをshotで出してくれます。
今回は店が空いていたので、それなりに酒の時間を喫茶風に過ごせます。
もし周りが皆ファーストフードばかり食べてる状態だったら、ちょっと肩身が狭かろうなと推察できます。
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270202/27096716/
Craft Beer GULP。
老舗吉田BAR、のお隣に最近出来たクラフトビールの店。
喉触りの良い様々なクラフトビールが用意されています。
あても充実、ソーセージも自家製でバックヤードで肉を『腸詰』しているとのこと。
バスタも料理店の様なのを出してくれます。
麦酒3杯を美味しく飲んだが、最も酸っぱい麦酒というのは口に合わんかった。
BAR文化が廃れつつある中、こういう形ででも新しい飲む場所があちこちで生まれているのは面白い。
場所柄外人客も多い、クラフトビールを求めて白人系多数来店もあるとの事。
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270202/27097023/
漫才師が経営のラーメン屋に行った。
早い時間帯なのでガラガラ。
なのだが店の奥に通される、まあ人気店だから仕方ないと思ったら、2階に上がれと言う。更に広い2階の窓際の席まで歩かされる。
先に二人ほど座っていた。
不味くは無いラーメンだったとはおもうが、空席のなか店の端から端まで歩かされた不快さでラーメン自体はよく覚えていない。
帰るときには、もう4人ほど来ていたが、もちろん空席率は9割以上だった。
人気店だから日時によって混雑するだろうが、これは無いよと思いました。
図書館とか、で本を読む。
最近の新しい図書館は、広くて椅子もたくさんあり読書に飽きても、気を紛らわせる他の本とか雑誌も置いてあるので重宝する。
しかし公共の場、でもあるので時として、自他ともにというか、あれあれと思うことも有る。
数年前、図書館の奥の方、人目に付きに行く場所のソファで本を読んでいた。
他にもソファ席、机の半box席も四五席あった。
気が付かなかったのだが、私は間歇的に軽く咳をしていたらしい。
気が付くと眼鏡をかけた小太りの男子高校生が目の前に立っている。
『 咳を止めて欲しいんですけど。』
最初何を言われているのか分からなかったが、声は聞こえていたので、
『 僕が咳をしていましたか。』
と聞いてしまった。
咳をした自覚はあったと思うが、人の邪魔になるほどだったか?という疑問が思わず出た、ので言ったとおもう。
高校生は頷いたので、鈍い私の頭だが、突然頭を回転させて、
ああ受験生なんだな、咳が気になって勉強できないんだ、確かにイガイガするが我慢できなくもない、彼はそれなりに礼儀を持って話に来ている、席立つのは癪だけど言い争う程でもないし受験生の気持ちも解らないでもない、と思って、
『はい、咳止めます』と答えると男子は戻っていった。
しばらくイガイガを我慢すると、我慢できなくもない。
15分ほどしてから席を立った。
全く他人の事だけど、
連なるbox席で読書してた時、数席向こうの初老の男性がイヤホン掛けて時々独り言を言っている。
よくありそうな事なので別に気にはしていなかったが、突然初老の男性の隣、勉強してた大学生ぐらいの男子が『 いい加減にしてくださいよ』と声を上げた。
隣だと、独り言に我慢ならなかったらしい。
イヤホンしているせいか初老男性から反応がない。
そこで彼は初老男性の肩を叩いて話し出す。
それからあれこれあって、うるさいという意思が伝わるのに1分弱は時間がかかったと思う。
反応鈍い初老男性は、『 ああわかりました、気を付けます。』と言って終わると思いきや、『 でもあなたもこれから気を付けてくださいね。』といったものだから、多分突然肩を叩かれて捲し立てられたことを言ったと思うのだが火に油を注ぐになってしまい、若い彼は息を大きく吸い男性に向き直り、『 あのねぇあなた。』
とやり始めたので、その辺りで私は席を立った。
たまに入った喫茶店で、読みだした本が予想外に面白くて、いつのまにか1時間近く経ってしまっていた、なんて好いものだ。
いい椅子があって適度に広い喫茶店が良い。
バグリックな開かれた感じも程々な具合。
季節が良くなると、人気のない公園のベンチ、屋根付き、で読書というのもイメージ的には良いのだけど、実際は椅子も固くて尻が痛くなるし、人気がない分反って人が来ると変に気になってしまう。
まあ、あれやこれやです。
おしまい。
本好きの下剋上?司書になるためには手段を選んでいられません?第一部「兵士の娘I」
- 作者: 香月美夜
- 出版社/メーカー: TOブックス
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
ある英人医師の幕末維新―W・ウィリスの生涯
ウィリアム・ウィリス(William Willis, 1837年 - 1894年)は、幕末から明治維新にかけて日本での医療活動に従事したイギリス人医師。
幕末維新に駐日英国公使館の外交官・医官として来日し、東京の初代副領事。
恫喝外交で名前を残したパークスの下で働く。
仕事は事務 兼 医師。
人手不足人材不足のため、医師と言っても必要に応じて膨大な事務作業にも追われる。
著名な日本通外交官イギリス人サトウ、と同時期に共に働く。
数年前に東北戦争あたりだけ読んで、後は読み残していたのだが、今回全部読破した。
全編興味深くて、軽い驚きもあった。
発掘された数々のウィリスの手紙や記録により構成。
一個人の視点で、社会的な視点に配慮していないので、
当時のイギリス人らしい差別的な人種観、
ご都合主義で偏狭な歴史観、
通俗キリスト教的な国家観・・・野蛮人の国とか、
等々が数多く見られておもしろい。
しかし、維新戊辰の戦禍を前にしてウィリスは、当時は敗者捕虜虐殺など珍しくなかった日本において、官軍側からの要請により、外国人としては単身戦地に赴き、敵味方の区別なく負傷者を助けた。
官軍に向っては絶えず捕虜の安全と医療の保証を訴え、言葉も通じにくい日本人医師とともに外傷の手当、骨折接木、四肢分断手術をなし、これを繰返し日本人達に説明し、実地に見せ、成功させ、患者の命を長らえさせる不眠不休の活躍をみせる。
鳥羽伏見から東北会津平定に至るまで、この長い間に、外人日本人と異人和人と勝者敗者を問わない、無私で高潔な道徳観に充ちた、高度で先進的な医療を成すウィリスの姿は、日本人に大きな衝撃と進歩を与えたと、察するに余りがある。
日本人だけでの勤勉な学問、貪婪な勉学という机上だけではなしえない、偉大な貢献を日本に残した人物。
その軌跡を描いた一冊。
著者は元日本駐在の英国外交官、にしてイギリス貴族。
当時日本の散見等。
狂犬病の犬にかまれた子供が5日で死ぬ。
天然痘の流行。
性病にかかっているのは日本人なら当たり前?のような状況。
薩摩では犬食は美味、とされていた。
日本の大名では、正妻の他に側女が3人いても東洋的な爛れたハーレム状態はない、屋敷の中では厳格な礼儀作法が生きていた。
イギリス領事、パークスは『変形的精神異常』。今日で言うパワーハラスメントで部下を殺した。
ウィリスは薩摩において、衛生的な食牛の殺し方を指導。
ちなみに此の本ではないが、会津籠城のとき牛食を勧めたのが日本医師の松本良順。
当初猛烈な反発にあったが、一度味を染めると大好評で、牛肉は籠城会津武士で奪い合いになった。
医師として実地に出向き治療しているので、官軍や幕軍・列藩軍による被害状況描写も多く、詳しい。
文庫になってても良いしkindleになってても良い作品。
単行本のままなのが残念。
安価で入手できるので、まだましか。
幕末・戊辰戦争 -図解詳説 (中公文庫) 金子 常規 2017/3/22
この3月の中公文庫の新刊。
著者は元軍人で、戦後に自衛隊に入り野戦特科で活躍。
退職後は戦術史等にかかわる著作業に従事。
明治維新前後の小説や史書を読んでいると、歴史の事象について疑義がいろいろ湧いてくる。
小説で多いのが、大規模な戦闘について具体的な記述が乏しいこと。
鳥羽伏見の戦争なんて、官軍が勝つべくして勝ったみたいな纏め方が直ぐ出て、何があったかを大幅に省略してしまう。
実際は、幕府の陸兵は装備の近代化も訓練も行き届いていて官軍は苦労しているし、前近代化部分にしても、会津藩の槍の攻撃にも官軍は辟易している。
また、明治辺りに書かれた一級の史書を読んでみると、そういう具体の戦闘には記述が溢れているが、そうなると具体の地理的状況や隊配置などが興味が湧いてくるのだが、昔の地名が現存していない場合が多く、地図やグーグルmapでは後を追えないことが多い。
地名が細分化した極所のせいもある。
そこで本書。
維新前後の各戦闘について、簡単ではあるが具体的な図示もあり史実を追っているだけでは中々分かり辛い戦闘の顛末を示してくれる。
例えば官軍による上野彰義隊征伐。
当初官軍の大村益次郎の戦略では、黒門を主戦場として薩摩が引き受け、長州等が黒門左手を大きくゆくりと包囲して、実践慣れしていない関東兵を包囲殲滅、逃亡兵も長州等が予期した方向に逃げるのを捕獲、と読んでいた。
実際では、薩摩の黒門主戦場はその通りでも、長州等の包囲進行は数日来の雨で土地が泥濘となり進むことが出来ず、その方面も彰義隊もメインの黒門に応援に回り、一層の事黒門が激闘となった。
なお、長距離にて攻撃するアームストロング砲も上野山地域砲撃と威嚇とランダム攻撃には役立ったが、戦場へのpoint射撃には当時の技術では難しく、戦闘場所局所への攻撃には、高台から砲の前進移動が必要になり、黒門撃破に時間がかかってしまった事。
彰義隊は近代軍知識には乏しかったが戦闘意欲は旺盛で、それもこれもで薩摩の死傷者がそこそこ出る始末になってしまった。
そして長州の包囲がずっと遅れてしまったので、終盤の彰義隊逃亡兵も予定しない方面に逃げて官軍が網羅することは出来なかった。
明治当時の書物あれこれを読んでいると納得させられる分析だった。
この本を読んでいると、先の上野山戦争ではないが、史実の書物では同一事案について別視点からのものも多々あり、その具体的な時間の前後関係が分かり辛いことがある。
この辺の時系列の判断、読み取り方について、戦闘の結果分析についても変わってくるだろうなみたいなことは感じた。
新刊だから暫くは本屋においてあるだろうが、こういうマイナー本は数年のうちに極めて希少になることも多い。
速攻で購入したのだが、小説や史実記録の穴を埋める良書ではないかと、まだ半分ほどしか読んでいないが思いました。
まあこんな書物、急いで読むようなものではない、史実なんかと頭の中なんかで照らし合いつつ、じっくり楽しめそう。
ライトノベル幼女戦記、の特異性
ライトノベルと称されているのにも拘わらず、恋愛要素がない。
エロ要素もない。
子供っぽいジョークもない。
抒情もない。
ハーレムもない。グルメもない。
もちろん萌もない。
あるのは第1次大戦前後の軍談であり、そのストーリー的な歴史改竄による歴史アレンジを微妙にパートでリアルとシンクロさせながらの会話。
それに戦記といっても活劇がほとんどない。
戦闘場面が乏しい。
作者の興味は軍事と、それに付随した政治経済にある。
軍事ではバトルは添え物程度で、戦略と戦術、局面の状況説明と戯言に大部分が費やされている。
会話を多くして読み易くしているにしても、個人的な活躍ぶりより戦局の俯瞰と展望、戦場からの状況推測、作戦立案、そして軍人達のビジネス的な会話。
よくもまあこんなものがラノベとして成立したものだと思うが、実際そうで、タチの悪い優秀サラリーマンが転生して幼女になる。
転生した異世界では、ほぼ1次大戦時ドイツで、そこでは魔術が軍事利用されている。
そういう枠組みだけは、ちゃんとラノベ形式なのだが、中身と進行はラノベ要素がほとんどない。
時代歴史小説で差異を例えるなら、柴連の眠狂四郎を読むつもりが司馬遼後期のような情報過多小説を読んでいたみたいな、である。
二巻後半においては、誤爆誤射と法遵守と法解釈と時代常識と立場常識の差異と虐殺と不幸なアクシデント、この混乱と錯綜に分け入っている。
作者あとがき2
『ポリティカルコネクトネスを一切考慮しない改稿。一言も突っ込まれなかった。』
幼女である必要がどこにもない、の批判は正しいが、幼女でなければただの小説になってしまい、ラノベにはならない。
結果的にだろうが、ラノベという枠に入ることで作者が安全策をとった面はありそう。
幼女が軍隊で大活躍ですよーというスタンスで、近歴史のポリティカルコネクトネスの煩わしさから遠ざけたのだろう。
アニメイゼッタは無邪気に戦史に分け入る危なっかしさがあったが、幼女戦記では特異な物語構築、歴史改竄が歴史史実の周知と網羅を伺わせる徹底があるので、見ていて進行の危うさは無い。
しかし、通常の歴史史観やヒューマニズムに囚われない、どこまでいっても現在の知的な戯言ベースを崩さない語りは、その自由さ故に魅力があるとともに、実際はイゼッタよりも余程に棘がある。
棘といっても、あるかもしれないあるだろう社会規範の一部に対してであって、本質的には危険でも何でもないエンタ。
エンターテイメントとか読み物ラノベと言うよりも、戦記をエンタにした面白さ。
実際に戦闘部分は実に少なく、著者は戦闘描写に興味がないのかと思える。
アニメでのターニャ爆撃機襲撃の場面、爆撃機に着地して手榴弾投げるあれ、あれは原作には無い。
世評の高い11話の空中戦も、原作の数少ない戦闘パートの一部を寄せて膨らませたもの。
代わりにたっぷりあるのが、兵站や配置や戦略や軍人会話。
幼女の設定を除いてみると、ラノベとは言い難いしろもの。
題名だけでドン引き、という作品だが中身は斜め上に充実している。
第一次大戦あたりは私の知識が乏しかったので色々面白かった。
メモ文章がまとまっていないが、こんな感想とインパクトがありました。
アニメは戦闘場面を巧妙に周到に大きく膨らませ、実にいい出来だったと思います。
幼女戦記 7 Ut sementem feceris, ita metes<幼女戦記>
- 作者: カルロ・ゼン,篠月しのぶ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン
- 発売日: 2017/03/17
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
TVアニメ「 幼女戦記 」エンディングテーマ「 Los! Los! Los! 」
- アーティスト: ターニャ・デグレチャフ(CV:悠木碧),悠木碧
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2017/02/22
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (2件) を見る
ひるね姫〜知らないワタシの物語〜 観た
現実とファンタジーの入れ替わり方、見せ方に感心する事は多かった。
いろいろと考えさせられる作品で面白かったのだが、別に問題作と言う訳ではなく、制作の成り立ちについて興味で考えさせられ、というかんじ。
面白かったという前提だけど、
趣味や好みにしても、キャラクターの顔に魅力がない。
出だしファンタジー設定が古典過ぎて興味が削がれる。
だから見出して10分以上は、地雷作選んで失敗かと、見に来たことを後悔したほど。
ジワジワと盛り返して、流石は神山監督と納得と満足ありました。
でも、子供っぽい展開に振れ過ぎがあったりは、やや残念。
映画で自動運転を扱ってるのに自動車メーカーとの協賛がなかったのが意外。
メーカーに特に悪い内容では無かったが、あれこれ口を出されたく無かったのだろう。
瀬戸内島嶼のローカルロケーションは好く出来ている。
終盤、手に手を取るシーンは『パブリカ』を思い出させた。
この監督はこういうものを、こう撮るのかと演出に頷いたりしました。
入り10人くらい。
もう奈良駅近くでは映画館は無くなり、奈良中心街からは高の原か大和郡山のイオンモールの映画館まで行かないといけなくなった。
イオンモール久世福商店で酒二点を購入。
カップ酒『かりほ 刈穂』と、720ml瓶天狗舞 柔。
日本酒は一升瓶で今までは買っていたが、ワインほどではないにせよ時間経過による酒の劣化は気になるところで、毎日グビグビ呑んでいれば早く消費できるのだろうが、酒呑みの曜日も場所も種類も不定期なので、飲み切り易いサイズにしたこの頃です。
こういう良いカップ酒にして、ビールか焼酎と合わせるのが、やはり無難かなぁ。
日本酒の飲み通しだと、いい日本酒でも、それでも後に残りやすいしねぇ。
山口組分裂と国際金融: インサイダーが明かすヤクザとカネと世界経済の関係 : 猫組長,渡邉哲也 を読んで
この本を読んだのは口座封鎖、これが新しい意味と形での社会制裁としてグローバルに成りつつあるので、その辺りの興味からだった。
しかし良い意味で期待を裏切る良書でした。
近年ヤクザのワールドワイドな経済活動を初めて描いた一冊。
中国の経済勃興に沿って、一部ヤクザはオイルマネーに手を出す。
具体にはドバイにまで乗り込んで、長期契約に囚われないスポット買いに行く。
出荷側と石油受取地支払い側の船荷証券を買い取り、その利鞘を取ったりタンカー行先を変えて高値で売り捌いたりして儲ける。
基本は違法行為ではないが、実際にはリスクの極く高い商売。
しかし金になるので一時ドバイは日本のヤクザだらけだったとか。
また、備蓄している石油の一部を横流しする人民解放軍幹部、ロシア油田の余りを売るロシアマフィア。このあたりの取引はヤクザの本領発揮か。
他にネットカジノや、ファンドに陰で出資しての金融業界の表舞台への進出も。
よくあるようなヤクザの自慢話本ではなく、まともな経済的な記述本。
猫組長という人は昔風に言えばインテリヤクザで、言葉の使い方もビジネスも知っている人物でしょう。
この20年余りで、こういう企業ヤクザと純暴力ヤクザに、分離が拡大して双方が離反して来たという歴史も語られる。
日本人暴力ヤクザの比重が薄くなって来たせいもあって、凶悪な中国ヤクザや朝鮮系が大きく勢力を伸ばすものの、中国本土の経済規模が巨大化して来たので、中国系の多くは活動を日本から中国本土に戻したとか、変にダイナミックな動向が面白い。
まだまだ語られないものがありそうで、対談の次作も期待したい。
山口組分裂と国際金融: インサイダーが明かすヤクザとカネと世界経済の関係
- 作者: 猫組長,渡邉哲也
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2016/12/14
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
麺屋ビビリ、MENYA BIBIRI。
特選魚介鶏そば 醤油980円。
淡い醤油色のスープ。
最初スープを啜ったとき、みそ?と思ったほど当たりが柔らかい。
魚介と鶏のバランスがこうなるのかというは驚き。クリーミーと言ってもいいかも。
そば、と言うだけあってアッサリ、でも柔らかすぎない食感。
確かなスープと確かに手を繋いでいる感あり。
赤みのあるチャーシューは柔らかくても噛みごたえあり。
肉肉してて良いかと。
この店のこの麺も千円の御馳走。
スープは飲み干さないと勿体無い。
直線道路で五分ほどに、ええかんじの新店二店舗とは、ローカルでは嬉しいものです。
店舗は元ローソンのあったところで、も少し前はずっとサンクスだった。
駐車場が広く整備されてるのも魅力。
奈良では駐車場が手狭で、評判が良くても行きづらいラーメン店もけっこうある。
近くには、隣にすきやに道ナナメ向いにファミレスのジョイフルあり。
知らなかったけど、袋麺の藤原製麺ってのは、なかなかかも。
騎士団長殺し : 村上春樹の新作を読んでみて。
読みつつメモしたりの、感想を表面的に。
羊をめぐる冒険や海辺のカフカに出てくるような、人里離れた小屋。
妻との突然の断絶。
古い中古車、高級外車。
女性達との交歓。
肖像画制作は『文化的雪かき』か『マジックタッチ』か?
村上作品おなじみの、それも初期中期の、アイテムや設定に私はニヤリと頷いたりした。人によればマンネリだと言う方もいるかもしれんが、まあ違います。
別荘友達と私の関係は、ワタヤノボルと僕の関係を洗練させて昇華させたかのよう。
そしてじわりじわりと徐々に奇怪な事が起るのだが、このあたりのリアリズムは大したもの。
プロローグや合間に伏線や予兆をはっているにせよ、元になった古典上田秋成の選択も含めて、長い時間と経過の逡巡と戸惑い、これを退屈させずに読ませる筆力。
これはやはり一流の小説家ならでは、でしょう。
そして奇怪な事件がはじまりそうでも、主人公はオリーブオイルとニンニクでトマトソースをつくっている。
これは書き下ろしで連載小説ではないのだけれども、連載小説的手法、時系列進行とは別に回想からのエピソードとか、そうではないかと推測したりも。
奇怪なことは、この小説では事件というよりも、同期性というか平行して日常と在り続けるように、根差したもののように表現される。
1巻末あたりまでくると、別荘友達と私の関係は、ワタヤノボルと僕の関係とは違っているのに気づく。
ワタヤとは対立であり敵対であったが、別荘友達とは対峙してるが二人で共犯めいてもいるし、行動で言えば、ねじまきでは僕は井戸に入って耳を澄ませたが、今回別荘友達が井戸ならぬ穴に入って、逆に私が穴の中を見守ることになる。
この変化は面白いし、別荘友達は『有り得ただろうまた別の僕』かもしれない。
人里離れた山の中の別荘で夜酒を飲んで、車に乗って来たからと言ってタクシーを呼ぶ場面があったが、帰る先も近くの別荘山中なのに、とうてい警官がいる訳でもなく、その社会正義にたいする配慮には笑ってしまった。
まあ、いったん国道に出ないと廻れないのかもしれません。
また、物語に途切れが無い。
不思議を投げっぱなしにしていないというか、もちろん説明できない不思議はあるけど、そこを過す人の経過を十分描いている。
それら含めて、読み終わって、たいそう面白かったのだが、ここで村上春樹が目指したものは何なのだろうかと問いが浮かんだ。
私には、『今までの村上春樹ストーリー』と『ごく普通の物語』の融合と相乗、村上春樹らしい飛び道具?に頼り過ぎない一つの志向、のように思えた。
そしてそれは、互いをを損なうことなく成功しているとおもう。
中身の芯ではなく表面的なカンソーです。
宗教に傾いた父親、顔のない肖像画、お守りペンギン、別荘間恋愛と親子関係の行方と、騎士団長殺しには続編の書けそうな要素は残っている。
しかし書くとなれば3.4巻と分量かかりそうな気もするし、イデアとメタファーの関係が無くして物語の続きは有り得るのかという疑問もあるし、そんなの書かないで10年後くらいに思い出したように一冊続きが出るのも相応しい気もする。
どうだろうか?
本作が文学でなくエンターテイメントだという評もあるが、それはそれで結構な評だと思う。本作よりコンビニなんとかの方が面白いともあったが、それもそう、大ベストセラーになるとこの程度はもちろん、実際は山のような膨大な読者がベストセラーとかノーベル賞とかに引き寄せられ、読みたくもなく興味もないのに本を読むことになる。
初版は130万部というから、そんな人は10万人では済まないでしょうね。
そこで疑義百出の阿鼻叫喚のレビューになる訳だが、まあご愁傷様です。
BOOKOFFとかヤフオクにでも売って供養してあげてください。
昔風に言うのなら純文学か大衆小説か、今ならノーベル賞かライトノベルか?
一人一人ががどちらでも良いといのは別にしても、その枠組み自体、分類差別構造自体が半ば崩れている。
ともかく、久しぶりに村上春樹を堪能できて満足でした。
奈良で酒、飲みに行ってみた。
近くの奈良でも飲みに行きたい、といろいろ店を探しつつあれこれしていたら、店については一人で行ってもよさげな感じありで、一度行ってみるかとか、かんじつつの今日此頃だけど、まあとにかく行ってみた。
前々から、奈良比較的近場でも一人でも飲みにも行きたい、ということで、大阪ではBARによく行っていたのだが、数年前から普通の居酒屋赤のれんにも手を出してウロウロしている。
奈良のbarにもそこそこ行ってみたが、
良い店なのだけれども気合が入り過ぎている、とか、
洗練な佇まいは申し分ないのだけれども、接客が観光客に特化し過ぎている、だとか、
地元密着で落ち着いた老舗にも見えかねないハードは有るのだが、経験に乏しいマスターは接客の奥底で欠けてるとか、
勝手な感想はあるにしてもbarという小箱あれこれなので、しょせんは個人の合うあわないかもしれんが、ですが。
ネット情報良さげだったのが駅からも近くて直よし、の店あったので。
近鉄奈良「かっちゃんの大衆酒場ザスタンド」 チョイ飲み不毛地帯の希望の星 — Syupo [シュポ] – 酒場めぐりマガジン
イスは足長の木製椅子。意外にもそれほど座り心地は悪くない。
客の回転だけを考えた、ビジネス特化の不安定椅子ではなかった。
新潟の酒。すんなりと喉を通ります。
日本海側から直送の魚介。刺身は二切食した後。
モルトがどうこうと言うものではない。
なかなかご機嫌な店、でした。