一汁一菜でよいという提案、少し変わった子あります、の2冊。
少し変わった子あります (森 博嗣)
こういう地味な文学的な面白さも書けるんだと、今更ながら小説家森博嗣氏の多彩な才能に驚いた。
大学教授が同僚との話、から始まる。
大学の教授周辺事情は森氏の私小説のように詳しい。
くだらない会議、上品な学生、一人だけで過ごせる時間の充実。
友人から料亭らしき店の話を聞く。
本当に食事をするだけの店らしいのだが、どうも要領を得ないし、友人も言い難いらしい。
そうしているうちに、そんな文藝風に話は進むのだが、思い出したのが川端康成の眠れる美女。
そんな官能は全く無いはなしだが、眠れる美女設定の極一部を摘出し、大きくアレンジ膨らませたみたいな感じ。
不思議なストライクゾーンに投げて見せたものだ、みたいな読後でした。
一汁一菜でよいという提案 (土井 善晴)
料理研究家土井勝の次男にして、現在父の衣鉢を継ぎ更なる活躍を続ける氏の、営業や美食ではないストレートな言葉が綴られる。
毎日食べる食事は、常に美味しくある必要は無い。
御飯と味噌汁だけで良い。
具を多く入れた味噌汁はそれがお数。
もともと主菜副菜ではなくて、御飯を食べる為のお数だった。
御飯、味噌汁。あれば漬物、これで普段は十分。
お店で惣菜を買ってきて並べてアレンジするより手間入らず。
簡単でも自分で料理する事が大事。
別に贅沢や外食を否定している訳ではない。
ハレの日も有ればケの日もある。酒を呑む日もある。
家で普通に食事をする時の力を抜いた提案、というか食事のルネサンスのようなものか。
理屈ではなく歴史と経験と常識から腑に落ちる、納得がいく提案。
目から鱗でした。