χの悲劇 (森 博嗣)
すべてがFになる、のある種の後日譚ともいえる話で、主人公が島田文子。
マガタ研究所にいて、モエと一緒にビリヤードしたり、スクール水着を着てインナーbox端末?にも一緒に入っていた研究者です。
モエは虎ビキニでした。
アニメでは普通人の普通っぽい顔が逆に個性的に見えて、島田文子嬢を覚えている人も多いでしょう。
マガタ研究所の事件のあと、いろいろあって香港で電脳にかかわる仕事をしています。
メイン主人公のモエ嬢の周囲にも散発的に数々の事件があり、それらの一部には島田氏とも浅い関係もあったようです。
香港でのイベント会場において、島田氏はある公的な人物から接触を受け、接触の意味がつかめないままの数日後、ある殺人事件に巻き込まれます。
ミステリーがメインであるような無いような最近の森作風ですが、これは結構まともな理解が決着していました。
また、ミステリーや人にかかわる風景や背景に力点があるので、今回は島田氏に持ち込まれた仕事、ある場所に隠されたデータの探知と発掘と移動なのですが、作者森氏のことですから資料を調べ上げて書いたものではないでしょうが、非常にスリリングで面白かったです。
多分ネットとか電脳にかかわる知識と理解が、作者は私などとは根本的に違うのでしょう。
この作品においては、すべてがFからの一連の連作においても大きな一歩があったように思えます。
このギリシャ文字シリーズは全く読んでいなかったのですが、興をそそられて初めから読み始めてみました。
初期以降の氏の作品、コンパクトに一定枠にキチンと収まった数多くの長編群については、私はあまり読んでいませんでした。
読んでみると、これらはこれらで面白いです。
ですが、すべてがFになる、からの長編10冊の集団からと比較しても、いわゆる物語の首尾一貫性というか長編一つとしての完成感を放棄して、求められるものをそれなりに書いておけば、謎解きや動機は背景の描写のようなもので、判る人には解ればいいんじゃない、判りたいpointは一応書いときますね、というスタイルは、一面ちょっとどーなんだろなとも思えます。
それでも面白くないわけでは無いので、モエやサイカワ先生や新しい学生キャラのぐだぐたとした掛け合いはfanの求めるものだろうし、まあこんなものなのかなとおもっていた。
そういうこれまでのギリシャ文字シリーズとは違って、このχの悲劇 (森 博嗣)はまともな感じがします。
すべてFシリーズの大半読んでいれば、これだけでも中々に面白いと思えます。
多分クイーンのxyz悲劇のリスペクトによるものだから、あと2冊はあると思いますが十分これらも期待できそうです。
島田嬢の運命やいかに、という本作なのですが、いろいろと含みも多くて楽しめました。
おすすめ。