王とサーカス 米澤穂信 新刊
駆け出し女性記者が転職の合間に訪れた山岳の王国ネパール。
安宿に泊まるのだが、そこから出会っていく人達が面白い。
会うごとに微妙に表情を変えてる物売りの少年。
大学をリタイアして世界を歩き回っているアメリカの青年。
宿常連の僧侶。
インド人のビジネスマン。
歩きまわる度に違う姿を見せていくネパールの街。
人の描写も等身大で、いかにもその場所にいそうな感じで、街歩きの世界が拡がっていく様子も合わさって、まるで自分がネパールに旅をしているかのような楽しい気持ちにもさせてくれる。
たまたま大きな政変に出くわし、国外脱出も困難な状況に陥る。
記者として政変を取材しようと試みるのだが、それが意外な展開に巻き込まれることに。
たいそう面白かったです。
一気に読めそうな充実ぶりですが、楽しみのために四五日かけてジックリ読みました。
物語の広がりも結末も納得の一冊です。
主人公が、さようなら妖精、のサブキャラの一人だけど、この作を読んで何故彼女を再登場させたのかが理解できた。
さようなら妖精の時は一学生だったけど、彼女は基本的に大人キャラなのだ。
そのために前作では図らずも、子供でも大人の立場を肩代わりすることになり、難しい役割を引き受けて仕舞うことになった。
そんな彼女であるから、大人になって異国の街の界隈で困難に陥っても危なげが無いし、性格のタフさにリアリズムがある。
本作は前作とは関係ないし、読まなくても面白さは変わらない。
ただ、キャラとの再会について、そんな感慨はあった。