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イチゴーイチハチ!(1)相田 裕、 鹿の王 上橋 菜穂子

 

 GUNSLINGER GIRL と違って、普通の学園生活を事もなげに描いているのに何だか驚いてしまう。

挫折した野球少年とかドラマチックな要素もあるけど、アクセント付けすぎることなくスラスラと話を進めていく。

ガンスリからの此の変わりようはファンにとっては非常に興味深いし、そうでなくても普通に水準のあるコミックとして読める。

なにげなく周到なので絵やストーリーに違和感がない。

前作ガンスリと全く違う、というものの『喪失と限られた期間での活動』といったテーマは共通かもしれない。

 

 

 上橋 菜穂子の物語で不満だったのは、その短さ。

精霊の守り人 などシリーズとして数冊にも渡った長編なのだが、書かれるべき内容がまとまり過ぎいて、概要的に飛ばした感じが私には残念なところがあった。

 

それだけ作品が面白いということであって、ただ単に面白いからずっと話が続いてほしい的な意味だけではなく、出版上の制約なのかなとか思っていた。

(それ故に精霊の守り人のアニメ化は原作を敷衍充実させてみせた傑作アニメなのです)

 

それが本作、鹿の王においては、無い。

書かれるべきところがじっくり書かれている。

私的にはその読中満足があった。

 

悪疾をもたらす病気、伝染経路、症状伝播の違い、対処治療薬剤研究。

これに伴いパワーバランスの均衡を求める政治状況、そのための組織暗躍、被支配層の流浪、病気のテロ利用と、物語はファンタジーといえども極めて現代的。

 

よくも此れだけリアルな題材をファンタジーに落とし込んで見せたと、作者の手腕には驚く。

それでいて戦争や政治、支配被支配、そんな事柄に対しての見地は現代左翼的な薄っぺらなものではなく物語の力強さを裏切らない。

充実の一冊でした。

 

 

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)