春琴抄、読みました、ああ。
谷崎潤一郎を本格的に読んでみようとはずっと思っていたのだが、全集で読むかとか本を集めたいとか変な色気が邪魔をして読みたい気持ちのまま放置状態だった。
でも読まんと話に成らんし、そこでエイヤッと即座に読める青空文庫で春琴抄をえらんでみて読んだ。
これは選んで正解であって、むしろ年をとってから読むことが出来て幸いだった。
短編に近い長さだが余人の追随を許さない、あちらに往ってしまった作品。
名とか傑とか完璧とかどう言っても許されそう。
作者が墓地を訪れるという近代的な出だしにも驚いた。
伝記を調べながら語るというスタイルで伝の編者の思い入れの強すぎるー文を常識的にこうではと批判しながら、編者である佐助のキャラをジワジワと浮き立たせる。
内容については短いし予見無しに読んでもらう他ないのだが、数多く映画化や舞台化されたのには納得する。
地の小説文になってしまはない伝記スタイルと凝縮された文章が、読んでいる者に書かれていない文や略されたセリフをも想い描かせるのだ。
これは生半可な作品ではない。
ただそれでも、どうしてもどうあってもこの小説自体の感じを実写や舞台で再現するのは極めて難しいことも納得してしまう。
視るのが嫌なら見なければいいとは簡単なモチーフだが、其れであちら側に往ってしまった者を描けるとは大谷崎と言われるだけはある。
余りにも有名な古典なのに、あまりにも現在進行形のような感覚でむしろ時代がやっと谷崎に追い付いてきはじめたのかと思えるほど。
青空 谷崎潤一郎 作家別作品リスト
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