明治天皇 (新潮文庫 全4冊) ドナルド キーン (著) 角地幸男 (訳)
4冊に渡る大冊なので、気になるところを参照程度、明治維新のパート辞書ていどになればいいかと思って4冊購入。
ずっと積読のままで放置していたのだが、ちょいと読み始めたら中々読み易い。
単純なことだが、字が大きい。
最近の新潮文庫は厚くなって利潤を取ろうとしているのかと思いきや、字の大きさで膨らんでいたのか。
フォントがデカくて読み易いしサクサク進む。
その代わりに小文字の注釈が多々あるのだが読まなくとも差支えは無い。
でも、資料好きの嗜好があれば小文字をチマチマ読むのも楽しい。
それに加えて1章1章がコンパクトにまとまっていてボリュウムも同程度に収まっている。これは読むペースと予定が掴み易くなるので、長編ものになると有難い。
文章も論理的で切れがいい。
明治維新は歴史的に大きすぎる枠組みなので、実際その全体像は掴みにくい。
維新の英雄達も短い光芒を残して消えていく。
でも明治天皇はそのただ中、その長い期間を空虚なるセンターに居続けた。
君臨し続けることが出来た。
変な言い方だが日本史受験の勉強している人にも随分参考になる本ではなかろうか。
これほど詳しいことから出題されることは少ないだろうが、少なくても在ることは在るだろう。
歴史小説なんかでも、宮中のことや徳川幕府システムそのもの( 最後の将軍や会津藩近辺の第2幕府でない旧態依然の本体 )は、これらは意外に盲点になっていて書かれることが少ない。
実際に広範な資料も少ない。
そういう意味での、維新歴史の全体像へのアプローチには、現在手に取りやすいものでは欠かせない一冊ではなかろうか。