九尾の猫 新訳 ハヤカワ・ミステリ 2015/8/21 エラリイ・クイーン 久し振り読む本格推理!
しばらく前に江戸川乱歩のマイナーのものを色々と読みかえしていたが、
乱歩の香気は感じられるものの、
小説の出来は不出来なものが多かった。
九尾の猫〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 2015/8/21 エラリイ・クイーン
アメリカ小説、当時は1942年で第二次世界大戦後でもあり、摩天楼もまだクーラーが無い時代。
夏の夜になるとニューヨーカーは風を求めて家を出て、車で橋の上に行ったり、地下鉄から出る風を浴びたり路上人口は多い。
そんな当時の風俗も面白い。
法則性のない奇怪な連続殺人にクイン親子は悩み、やっと見つけた法則性らしきものも、どう解釈していいか解らない不思議なもの。
怪しい人物が登場して話を揺らすが、そうもしているうちに又新しい殺人が起こり、遂には社会が不穏な状況に陥る。
最新事件のある事が不思議な同一性を浮かび上がらせ、それが全ての殺人についても徐々に明らかになる場面は、正にミステリーのカタルシスそのもの。
それがある人物にフォーカスされ、今までの奇怪な法則性がその真の意味を明らかにするのも、また同じ。
本格推理小説を何だか、本当に楽しめた気がする。
久方ぶりの本格推理小説の醍醐味。
そして、ミステリのまえに小説家として上手い、文章力がある。
話が佳境すぎるあたり、こういう展開で引っ張るのは悪くないがどうなのか、当時の流行りだったのかとか思ったりもしたが、でもそんな憶測は違っていて、ああこう来るのかと唸らささせる事しきりでした。
あらゆる推理小説は全てホームズの亜流、という言い方があるが、そんな風に言ってみたりしたりすると、今の長編ミステリ小説は全て黄金期長編ミステリの亜流か水増しだ、なんてと言えなくもない。
チャンドラーも最近は村上春樹新訳もありいので注目度は特別高いが、
チャンドラーの文学性もいいのだけれども、
本作クイーンのミステリそのものの堂々とした構築振りには今回は圧倒された。