レッド・プラトーン 14時間の死闘、は面白い。
『 アフガニスタン北東部の山岳地帯に位置するアメリカ陸軍の戦闘前哨(COP)キーティング。 この小規模な米軍陣地は、急峻な山々に囲まれた深い谷底にあった。
2009年10月3日の早朝、前哨に駐留していたレッド(プラトーン)を含む黒騎士中隊の兵士50人は、四方からにわかに沸き起こった猛烈な銃火器の発射音に眠りを破られた。
300人を超えるタリバン部隊による、かつてない規模の奇襲を受けたのだ。
《NYタイムズ》ベストセラー & ソニー・ピクチャーズ映画化! 』
その場にいた当事者が、自らの経験と膨大な調査と聞き取りによって再構成された完全なリアルノンフィクション。
メンバー紹介も面白い。日本では上品に化粧して飾って書かれがちだが、
あけすけにメンバーの悪行も語られる。
ゲータレードにウオッカを入れて飲みつつ、訓練に参加する兵士。
テスト用紙を盗んで退学させられ、マリファナ漬になっていた兵士。
『 マリア・キリレンコ、ロシア・モスクワ出身の美人女子プロテニス選手 』の下着(本物)から漂う香り・・・。
極小さな局地戦といえども、米軍の現在のシステムも象徴的に露わになる。
各地各所に軍隊を大量配備して面を拡げるのではなく、ワールドワイドでは空母と飛行能力で必要な個所に必要な時間に必要な軍事力を投入するという、各国の個別でも面でなく、点と線で地域を制圧する、機動能力を極限にまで高めたシステム。
しかしアフガンの地方の果て、細かく入り組んだ山岳地帯に窪んだ小さな盆地、すり鉢の底のような場所に基地を作っていたため、タリバンから安易に包囲攻撃されやすく、やっとのことで友軍機が応援に集結しても、敵味方が近すぎるのと、高空から見てジグザグの地の割れ目の中を攻撃するような難しさがあり、集結した飛行機同士で混乱することになる・・・・
教養的な、社会考察的な見方はうっとしいかもしれないが、その手の見方が正解なのも事実。
最新の米軍、日本人の軍事知識の欠如、軍事知識の補完と言うか必須項目知識かも。
戦略レベルでは政治経済との密接度が高いので、まだ米軍の軍事スタンスは周知されていなくも無いが、戦術レベルましてや戦闘レベルになると、身を乗り出して知ろうとしなければ知ることができない。
そんな要求を満たす貴重な一冊。
『 タリバンによって綿密に練られた襲撃計画、鉄壁の包囲網、絶え間なく降りそそぐ銃砲火を前に、友軍のアフガニスタン国軍は敵前逃亡、米兵たちは次々と斃れていく。
そのとき、無線から切迫した声が響いた。「敵兵が鉄条網内に侵入! 」 』
あと、アメリカの戦略と言うか目的なのだが、この様な失策的な撤退戦においても、実は本質的には大きく成功している。
確かに消費した兵器武器において金額は、タリバンのそれよりも遥かに巨額だろうが、人的には10倍以上の人数を撃ち取っている。
確実にタリバンの力を削いでいるのだ。
この辺りをどう評価するのか、全く評価しないのかによっては読後感も大きく変わるだろう。