さよなら、カルト村。思春期から村を出るまで. 高田かや 、著
軽いホワホワタッチにもかかわらず、予期に反してこの本は面白かった。
ヤマギシ村で生まれ育った生活をコミックで描いた作品。
カルト宗教?っぽい書物については、ここ数年で読んだものと言えば、宗教学者島田氏の新書とか、名高い村上春樹の1Q84ぐらいだが、こういった世界についてのみ言えばだけど、それらに匹敵するほど読み応えあった。
なんというか普通の魅力、カルトに対する偏見ありき勧善懲悪ありき批判ありき視点でなく、では無く、普通にそこで生きている人の確かな視点と感覚。
親から殆ど隔絶させた子供の生活など、カルトに対しての批判や疑問が無いわけでは、勿論無い。
ただ、その辺の批判疑問について、最近は特に気になる点があった。
『 ヒジャーブを着けて辛い思いをしながら、めげずに弁護士になりました」みたいなイメージだと思うんですけど、全然そんなことではないんです。』
『 そもそも個人的に偏見や差別を受けたという経験が全然ない。』
そんな女性が、差別と偏見と闘って資格を勝ち取った記事をでっち上げられたもの。
毎日新聞としては、本人の感情はともかく、毎日新聞が決める正しい感情と正しい考え方の在り方はこうだからこう記事にした、のだろう。
このことを此の本についてダイレクトに当て嵌める事は出来ないが、著者がハードなこともホワホワタッチで描いていることに対して、やっぱりまだマインドコントロールが残っているとか、人格を否定するようなレビュを読むと、枠と形式に決められた表現でしか情報を受け取れないのだろうかと、残念な気持ちにもなるのだった。
著者は声高にカルトを批判する訳ではなく、村の生活を淡々と面白おかしく綴っているが、そう普通に見えても、村にいた当時から何も考えてい無さそうに見えていても、村を出る決断をする。
嵐の夜に脱出した訳ではない、普通に判断して親と話して、周囲や友人たちと別れ、近くの街で働き始めた。
著者はホワホワして天然だが、この本には力強い人の軌跡がある。
その決断こそ、そこに至った考えこそが、何にもまして強いカルトに対しての批判だろう。
そして文章にはしていないものの、おそらく両親に対する批判でもあったのだろう。
読んだ価値のあった本でした。