ライトノベル幼女戦記、の特異性
ライトノベルと称されているのにも拘わらず、恋愛要素がない。
エロ要素もない。
子供っぽいジョークもない。
抒情もない。
ハーレムもない。グルメもない。
もちろん萌もない。
あるのは第1次大戦前後の軍談であり、そのストーリー的な歴史改竄による歴史アレンジを微妙にパートでリアルとシンクロさせながらの会話。
それに戦記といっても活劇がほとんどない。
戦闘場面が乏しい。
作者の興味は軍事と、それに付随した政治経済にある。
軍事ではバトルは添え物程度で、戦略と戦術、局面の状況説明と戯言に大部分が費やされている。
会話を多くして読み易くしているにしても、個人的な活躍ぶりより戦局の俯瞰と展望、戦場からの状況推測、作戦立案、そして軍人達のビジネス的な会話。
よくもまあこんなものがラノベとして成立したものだと思うが、実際そうで、タチの悪い優秀サラリーマンが転生して幼女になる。
転生した異世界では、ほぼ1次大戦時ドイツで、そこでは魔術が軍事利用されている。
そういう枠組みだけは、ちゃんとラノベ形式なのだが、中身と進行はラノベ要素がほとんどない。
時代歴史小説で差異を例えるなら、柴連の眠狂四郎を読むつもりが司馬遼後期のような情報過多小説を読んでいたみたいな、である。
二巻後半においては、誤爆誤射と法遵守と法解釈と時代常識と立場常識の差異と虐殺と不幸なアクシデント、この混乱と錯綜に分け入っている。
作者あとがき2
『ポリティカルコネクトネスを一切考慮しない改稿。一言も突っ込まれなかった。』
幼女である必要がどこにもない、の批判は正しいが、幼女でなければただの小説になってしまい、ラノベにはならない。
結果的にだろうが、ラノベという枠に入ることで作者が安全策をとった面はありそう。
幼女が軍隊で大活躍ですよーというスタンスで、近歴史のポリティカルコネクトネスの煩わしさから遠ざけたのだろう。
アニメイゼッタは無邪気に戦史に分け入る危なっかしさがあったが、幼女戦記では特異な物語構築、歴史改竄が歴史史実の周知と網羅を伺わせる徹底があるので、見ていて進行の危うさは無い。
しかし、通常の歴史史観やヒューマニズムに囚われない、どこまでいっても現在の知的な戯言ベースを崩さない語りは、その自由さ故に魅力があるとともに、実際はイゼッタよりも余程に棘がある。
棘といっても、あるかもしれないあるだろう社会規範の一部に対してであって、本質的には危険でも何でもないエンタ。
エンターテイメントとか読み物ラノベと言うよりも、戦記をエンタにした面白さ。
実際に戦闘部分は実に少なく、著者は戦闘描写に興味がないのかと思える。
アニメでのターニャ爆撃機襲撃の場面、爆撃機に着地して手榴弾投げるあれ、あれは原作には無い。
世評の高い11話の空中戦も、原作の数少ない戦闘パートの一部を寄せて膨らませたもの。
代わりにたっぷりあるのが、兵站や配置や戦略や軍人会話。
幼女の設定を除いてみると、ラノベとは言い難いしろもの。
題名だけでドン引き、という作品だが中身は斜め上に充実している。
第一次大戦あたりは私の知識が乏しかったので色々面白かった。
メモ文章がまとまっていないが、こんな感想とインパクトがありました。
アニメは戦闘場面を巧妙に周到に大きく膨らませ、実にいい出来だったと思います。
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