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山口組分裂と国際金融: インサイダーが明かすヤクザとカネと世界経済の関係 : 猫組長,渡邉哲也  を読んで

この本を読んだのは口座封鎖、これが新しい意味と形での社会制裁としてグローバルに成りつつあるので、その辺りの興味からだった。

しかし良い意味で期待を裏切る良書でした。

 

近年ヤクザのワールドワイドな経済活動を初めて描いた一冊。

中国の経済勃興に沿って、一部ヤクザはオイルマネーに手を出す。

 

具体にはドバイにまで乗り込んで、長期契約に囚われないスポット買いに行く。

出荷側と石油受取地支払い側の船荷証券を買い取り、その利鞘を取ったりタンカー行先を変えて高値で売り捌いたりして儲ける。

基本は違法行為ではないが、実際にはリスクの極く高い商売。

しかし金になるので一時ドバイは日本のヤクザだらけだったとか。

 

また、備蓄している石油の一部を横流しする人民解放軍幹部、ロシア油田の余りを売るロシアマフィア。このあたりの取引はヤクザの本領発揮か。

他にネットカジノや、ファンドに陰で出資しての金融業界の表舞台への進出も。

よくあるようなヤクザの自慢話本ではなく、まともな経済的な記述本。

 

猫組長という人は昔風に言えばインテリヤクザで、言葉の使い方もビジネスも知っている人物でしょう。

 この20年余りで、こういう企業ヤクザと純暴力ヤクザに、分離が拡大して双方が離反して来たという歴史も語られる。

日本人暴力ヤクザの比重が薄くなって来たせいもあって、凶悪な中国ヤクザや朝鮮系が大きく勢力を伸ばすものの、中国本土の経済規模が巨大化して来たので、中国系の多くは活動を日本から中国本土に戻したとか、変にダイナミックな動向が面白い。

 

まだまだ語られないものがありそうで、対談の次作も期待したい。