村上春樹はオカルト作家である、モーム短編を読んで。
サマセットモームはオカルト作家ではない。
ただ事実の中にオカルトが含まれていたとしても、モームはそれを排除しない冷静さと皮肉を持っている。
村上春樹はオカルトでズブズブだから、モームからそんな姿勢自体を学んだのだろう。『剃刀の刃』なんか好きな本として村上春樹も言及しているが、短編『マウントドリイク卿の死』なんか、村上春樹に相当強い影響を与えたのではないかとか推測に足る作品。
ある精神病医の話なのだが、自分の医学知識や医術技能を遥かに超える実績と、理由の付かない能力を持つ医師の話。
この医師はフロイトやユングのいかがわしさは百も承知で、彼らの業績にも全く信頼していない。
その医師が国家的に優秀でスノッブな貴族政治家、マウントドリイク卿を診ることになるのだが・・・
私はこの小説を読んで村上春樹ねじまき鳥クロニクル、そこでの僕の医療行為、を想起した。
全く違う話だけど、ある種の似た話が作家によって如何に異なる出来になるか、明示されているかのような印象を受けた。
まあ勝手な推測ですけど。
もっともモームはオカルト作家ではないので、もろオカルトを扱った長編小説『魔術師』なんてのもあるが、これは成功作とは言い難い。
元々の短編集。
モーム傑作選。
- 作者: ウィリアム・サマセットモーム,William Somerset Maugham,木村政則
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/04/12
- メディア: 文庫
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (9件) を見る