プリンセスメゾン 池辺葵. を読んで
高校卒業後、居酒屋で働いてる女子がマンション購入のためにモデルルーム見学の常連になる。
どんなマンガコミックでも、優れた作品の要素もしく魅力の一つは、キャラの多彩な表情が描けている事。
この作品、リアルでもなく劇画タッチの詳細でもなく、どちらかというとマンガ的なシンプルな線画に近い。
でも、インクをつけたシンプルな一本の線が、見てるとじんわりと滲んでくるような、そんな表情をみせてくれます。
それは主人公だけではなく、取り巻く人々についてもそうです。
また、キャラの眼がページを追うに従って、ゆっくりとでも着実に力を帯びてきます。
マンションを買う人々も群像的に描かれます。
関西弁の金持ちお嬢様、漫画家、優秀なキャリアウーマン、夫の帰ってこない奥様、染色家?などとなど、彼女達に人生にも、ポツリと主人公が顔をのぞかせたりします。
いろんな人生との対比、マンションを真摯に求めるヒロインの姿を通して、次第に彼女のシンプルな、痛切と言ってもいい姿勢が浮び上ります。
みていると何が滲んでいるのか分からなくなって来ることもあります。
そう思って改めて物語一巻冒頭の主人公の表情を見ると、夢に向かって邁進しつつも、その瞳に写っているのは夢の城塞ばかりではなくて、茫々とした絶望もまた湛えているようにも見えます。
一人で生きる覚悟への、静かで慎ましい賛歌のようなコミックです。
一度読んで感じ入って、二回目はゆっくりと読み直しました。
素敵な作品です。
感謝。