劇場版 聲の形、なんばパークスシネマ にて
特筆すべきは中盤までの独特のテンポ。
リアルタイムでもなくダイジェストでもなく、対象に触れては離れといった距離感。
聾唖という題材が題材だけに下手に近づくと、良くも悪くも痛い痛い場面だらけになる。
この辺りの原作を材料としての映画の捌き方は一流の腕前。
加害者と被害者という単純な片付け方でなく、傍観者や善意すぎる言葉・偽悪な振る舞い・身内親族の無力感と押しの強さ・自己愛からの自分を守りすぎる悲鳴そんな数々を、裁くのではなく非難するのでもなく、人とはそういうものなんだというヒューマンな視点が一貫している。
これが二時間あまりの長時間を安心して見ていられる要素の一つ。
といっても優しいだけの物語ではない。
子供の現金な人間関係の推移や、物事の結果が確定してから初めて厳しい態度に出る男性教諭に対する作者の眼差しは厳しく辛辣。
花火の場面は美しかったですね。
花火の拡がっていく火輪と同時に火薬が爆発する不穏な音も拾って、よけいに綺麗が際立ちました。
そしてトータルとしてこの映画、主人公とヒロインが被る波乱は、その感情も含めて、批判したり同情したり免罪したりでなく、人と人の交差して重なる軌跡なのだ。
それは正しくドラマというべきで人間を感じることができるものだ。
映画は原作と別物だろうが、そこにある心線は画面の中に根を下ろし美しい花を咲かせたかのようだ。
とても、いい映画を観れました。
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原作者は本作で名前を不動のものとしたが、名を世に知らしめたマルドゥック・スクランブルの作画とアレンジも忘れがたい。
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