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追想五断章 (集英社文庫)   米澤穂信 、 読後

小説を読む楽しみを、この作者はきちんと提出してくれるのが、読んでみて何時もながら嬉しい。

 

職がなくて親類の古本屋でのアルバイト生活、本筋に沿って確かに物語は進んで、変に恋愛を絡ませたり、突発的すぎる事件も起こりません。

そんな冗長な物語的余技に陥ることなく文章力・構成・話で勝負する。

米澤氏の満願を読んだとき、昔々学生のときに松本清張の黒い画集を読んだときに受けたようなインパクトがあったが、清張作品よりも人の姿の成り立ちがくっきりするような描写。

 

個人が発表した世に知られない古い小説を探すストーリーなのだが、主人公、依頼者、主人公の背景、探索で出会う人物達、語られなかった動機背景、古い小説の文体。

それぞれがそれぞれに的確で達意で、言葉が過ぎず、文章も話も納得させてくれる。

終盤になって、依頼者の背景が浮き上がってくる緊張感なんかも良いものでした。

 

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)