職業としての小説家 (Switch library) 村上春樹
紀伊国屋書店が此の本を買占めていたので、奈良では出版から数日は購入できませんでした。
大阪一部大書店でもそう。
でも内容は、職業的考察自伝みたいで面白い。
流石に村上春樹も、年を経て実績もあり、本人が好むと好まないとにかかわらず日本代表のような地位にあるだけに、言葉は謙虚で丁寧だが自信と確信に満ちた文章。
初期の羊をめぐる冒険なんかでは、明日もしれないけど何となく楽しくやってますみたいな軽さと、絶世の美女とか悪を司る組織とかのギミック。
それとか、もっと初期では双子や羊男など、サブカル的な背景が村上ワールドから無くなって久しい。
良くも悪くも普通の小説の土俵で世界を構築し続けている。
そんなパワフルさ柔軟さを作者はこうやって身に付けてきたのかと、読んで改めて楽しめた。
個人のことと言いながら、文学とか小説の在り方にも言及してるが、わざわざこうしてまで書くのは、かつて村上春樹は小説でもなく文学でもないと言われていたのが、今や日本代表でノーベル候補の状況が迷惑でもあるのだろうが、純粋に可笑しいのだろう。
そういう世間の評価の無責任さについて。
また、今までの著者は、私のことは静かにほっといてくれ、というスタンスだったが、ノーベル云々もあって世間は嫌でも著者をほっといてくれないので、誤解が生じるようだったら、興味事象について敢えて強く自己主張しておくことにした、そんな本かもしれない。
表紙を著者写真にしてるし。
翻訳にかけている手間暇情熱には驚いた。
自然発生的に海外のハルキ人気か生まれたと思っていたが、そうではなくて、日本の取り巻く状況に失望して英語テキストに力を注いでいた。
興味本位としてだけど、そのときに如何につまらない事件が作者に起こっていたのか、詳しく知りたいところ。
※
また、結論を何でも出せば良いものではない、というのはその通りだとおもう。