村上海賊の娘 和田竜
織田信長がちょっとだけ、かすめるように出てくる場面があるのだが、これが格好良い。
瀬戸内水軍と大阪系水軍の描き分けも明確で、個人的に面白かったのが、ガラの悪い関西弁を使う水軍のキャラ付けというか、アバウトな行動ぶりを俳味と表現しているけど、この辺の物語内リアリズムは確かなもの。
後半になって戦争に足を踏み入れるが、戦わずに見合っているところとか、戦いが乱戦になって錯綜して混乱する様とか、物語といえどもリアルな視点が生きていて、司馬遼太郎の歴史小説の俯瞰的説明的な視点に慣れた目には新鮮。
行動原理が今のテレビドラマのように現代道徳に汚されていない。
飽くまで戦国の一人・家族・組織としてのサバイバル行動。
脚本が元で会話が主体だから読みやすい。
人物造形もローカルな歴史地理社会背景も確か。
本当に、こなれた面白さのレベル高い読み物です。