小説1冊、コミック1冊
地方都市。学校帰りの道すがら、雨の中、東欧の少女と出会う。
平凡な日常に紛れ込んだ魅力的な異物。
よくある些細な異文化交流。
かすかなロマンチックな予感。
その通りに淡々と進んでいくのだが、不穏さが訪れて、物語は社会歴史的ミステリの影を帯び始める。
各キャラの造形が等身大でぶれていない。
確かに、ここに彼や彼女達がいたのだと、そう思える作品。
ラノベのように読みやすいが、作品はライトではない。
こういう小説は、最近はちょっと無いような感じがします。
一気に読んでしまいました。
聲の形(1) コミック 大今 良時
先生もふくめて皆がバラバラで、皆が静かにいじめに傾いてく、その辺の冷静な描写。
ごく1シーンなのだが、クラスの学級委員長女子が凄みを見せる。
いじめが取り返しのつかないようになって、表沙汰になり、その間で学級会議が始まるのだが、そこで最後に責任の擦り合いが始まる。
その責任のなすりつけが委員長にも廻ってくるのだが、そのときの委員長の責任回避をする仕草が、ちょっとした仕草なんだけど、何気無いけど、これがすごい絵だった。
自分の人間関係の立ち位置を如何に正確に安全なところに持ってくかという、その辺りを一つの絵で表現してしまった。
この彼女の行動を胸糞悪く取る読者も多いだろうけど、作者はただ彼女はこうなのだと、その表現に愛情深く見詰めてさえいる、そんな作者はすごい。
いじめをやってる主人公もそのまんま何の考えもなく、ただ面白いから行動してるに過ぎない感じがよく出ている。
作者は声高に何かを訴えようとして、この作品を書いてるわけではなく、ありのままにこの人を見たい、ありのままにこの人達を描きたいという気持ちで描いているのだろう。
だから疎外迫害めいた内容なのに、ヒステリックにならない。
人をそのまま人として描くことは、巧言令色や悲惨叫喚をいれなくても、ヒューマニズムに通じるのだと思ったりした。