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魔法科高校の劣等生 (15) 古都内乱編 (下) 佐島勤

上巻のことであるが、その冒頭あたり、黒羽姉妹来訪の打診に緊張が広がる。

お兄様の休日に仕事を入れたくはない、しかし四葉本家との関係で黒羽訪問は断れない。

そんな深雪の心情を踏まえての、司波と黒羽の姉妹対面。

あちらでも緊張した黒羽姉妹にさり気無く手を差し伸べる、お兄様。

トラブル案件を抱えて互いに困惑しながら、特別な仕事に対する心構えを説いて黒羽姉妹を感服させるお兄様。

 

このあたり、短いセンテンスで訪問と会話だけの章なのだが、文章運びが優れて、バトルでも異能絶対値でもなく、普通会話だけで流石お兄様とおもわせる、小説内ではなく読者にもおもわせる、その手腕は作者の非凡なところ。

実際、ここの会話が全体のグランドデザインにも繋がっていて、微妙かつ遠回しな伏線にもなっている。

 

魔法劣等生の何が面白いのか、というといろいろあるが、こう言った各キャラを踏まえた細かな文章運びの上手さが一役買っていることは間違いない。

それがキャラの裏付けとなって、結果として、キャラ一人ひとりを濃く印象付けることになる。

実際、ストーリーよりキャラのインパクトが作品の主な印象に残ることもある。

 

3巻に渡る長編・来訪者編ではストーリーは魍魎めいた存在とかアメリカ術者との関わりバトルがメインなのだが、実際に一番インパクトがあったのは、ロボットドールの奇怪で恥ずかしい覚醒であったりする。

これで、お兄様ハーレムは異様な性格を帯びることになるのだが、お兄様キャラ設定上によりお兄様本人は平然としているのも一興。

 

今回京都下巻でも、本筋とは別に七草嬢放置顛末があったりする。

これと、かつての七草嬢据膳発言とを絡めて考察するのも面白いかも。

 

しかしキャラあれこれ発露だけでなく、シリーズ全体でいえば横浜騒乱編のように真っ当に野太い地域戦闘を画いて見せた事がシリーズとしての真価。

 

この作者だから、次作からの四葉一族の蠢動・醜悪・闇歴史とか諸々を画いても面白いと予測します。

 

次作も期待しております。

 

  

 横浜騒乱編(上) 魔法 劣等生〈6〉          

http://oidon00.hatenablog.com/entry/2014/07/20/125340