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oidon00のブログ

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鳥羽伏見の戦い 作者: 野口武彦

 

 今までよくある小説は戦争を描いていない。

人間を描いたり 時代の流れを表現しているらしいが戦争そのものは描かない

こういうあたりは小説を読んでいて不満だった。

人間のドラマを書きたいのはわかるけれども、戦争そのものは一体どうなっているのか?よくわからないということがままあった。

 

鳥羽伏見の戦いで言われるのが、新政府軍の近代兵器に対する幕府側の古式装備。

後付け理由がこの戦いほどなされたものはないので、たいていの人が実際の資料に当らずに、戦闘の結果から推測したものを書いてしまっている。

 

実際は新政府軍の銃は前込め銃だったし、幕府の一部訓練された歩兵は後詰め銃が整備されていて、その連続銃撃の速さに新政府軍は苦労している。

このへんを資料から解き明かしていくのは本作の一つの肝。

 

氏のように根幹となる疑義に深いメスを入れることなくても、ちょっと当時の資料を見たら会津藩の槍には相当苦戦したとか、一方的な戦いではなかった傍証はすぐ見つかる。

 

レベルが低いテレビドラマだと戦闘シーンも書きたいドラマだけもってきて、女はいつも泣いている、とか庶民がいつも犠牲になるとか、人民の力が勝利を導いたとか、その手の顛末だけあって、実際戦闘の事実が蔑ろにされている。

 

また、一流の時代小説家以外の、現代小説を書く作家が時々歴史物を書いたりするが、資料として当時の史料を読まずに、現在の解説書や研究書だけ読んで小説を書いてる作家も結構多いと思う。

そんな作品は視野が現代専門的に過ぎてしまっている。

過去当時の圧倒的な直接情報から目を閉ざしているからだ。

 

本書では死傷者や負傷者の取扱いにも触れられる。

新政府軍では皆後方へ送られるが、幕府軍歩兵の死者は道端に捨て置かれた。

また、野戦病院で寝かされて治療中兵士が敵に攻め込まれた時の扱いなど当時の凄惨さが垣間見える。

 

テレビドラマ脚本作家など、時代関係は考証担当に任せて、詳しい歴史事実経過から目をそらして好き勝手現代ドラマ風に書いているだろう。

本書は、そんな風に汚れて着色された歴史風景を拭い去って、リアルで鮮やかな史実をダイナミックに見せてくれます。

実に面白かったし、鳥羽伏見は皆様も概要は御存知とおもうので、読まれるとキット面白いとおもいます。