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秋の牢獄 恒川光太郎 (著)

 

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

 

 

かつて遠野物語では江戸から明治の時代、そして東北の地方色彩に根差した語りであったように、『秋の牢獄』で語られるマヨイガのような短編は現代の時代性と風俗を色濃く反映しながら、それでいて夢に分け入ったような心地にさせてくれる。

 

時間的なマヨイガ

エンドレスエイトのような作品は閉塞感が漂う印象があるが、意外にも世界が広がるような感じも交えていて面白い。

場所的なマヨイガ

家を継ぐ事が抽象的なファンタジーになって、その明暗を照らす。

魔女の隠居場所のような、そんな場所に暮らす祖母と娘。

些細な会話がリアルで魅力的で、グッと生きている。

 

魔がいて鬼がいて、地獄があり救いがあり、人や生業から世界と感情がある。

氏の作品は、10年20年という時の流れを短編でしみじみと味あわせてくれる。

 

こんな世界に私も足を踏み入れたい。

その場に来てしまったらああしてみようか、それてもじっとしていよかとか、そんなに思わせる、読書ならではの楽しい一時でした。