友情について二題 パーフェクトフレンド・ふたりの距離の概算
よく似たテーマで、全く異なる2作を読んだ。
パーフェクトフレンド 野崎まど
少女達が不登校のクラスメートの自宅にプリントを持って行く。
不登校の彼女は既に大卒の天才少女で、ただ友達というものが理解できない。
そこからドタバタと始っていくのだが、読み終わったときに残念だなぁと先ず思ってしまった。
小説のパターンから少し外れてしまっているのだ。
そこが残念だと。
しかし、ではこの作品が面白くなかったのかというと、全くそうではなくて、ラノベコミック的なキャラが十二分に生き生きと会話して動いて、読みやすくてテンポもいいし、それでいて中身が薄い訳では無く、友達概念の追及がだんだんとザラザラしたものに辿り着いたりもする。
残念と書いたけど、パターンから外れだしていくのも大きな魅力で、エッと思うような展開も見せる。
そして作者は美しい言葉を紡ぐ。
それは大輪の打ち上げ花火のように華麗で眩しくて視界に収まらないような、そんな文章。
若い読者なら花火と一緒になって、光の中心から世界が輝く光芒を見渡せる人も多いだろう。
私はもう年齢を取ってしまっているので、その美しさを遠くから愛でるばかりである。
私が残念におもったことは、読めば分ると思うけど、気にならない人も多いと思う。
私自身、そのつっかかりで作品全体を決めつけるのはオカシイと思い直し、少女たちは本当に生き生きと動いていたし、敢えて一読をお勧め。
天上の花火ではなく、日常生活普通にある人の影、その意味を読み解くような、リアルに判断するなら推理というより洞察力の深さをみせる作。
2年生になった古典部一同の前に1年生の入部希望者女の子が登場する。
みんなと仲良くなって話も合って当然入部、が何故か一転入部を止めてしまう。
なぜチタンダと物別れになったのか?
ハーフマラソンと共に状況を知りえるのか?
彼や彼女たちの答えと行動は?
その追跡と謎解きとオレキの葛藤なのだが、古典部シリーズの期待を裏切らない長編。
トリックというより、思い込みと誤解の在り方なのだが、このへんの日常の自然なアクシデントを形に出してみせる、そういった見せ方は本当に作者は上手くて唸ってしまいました。
2年生になって、世界にやや拡がりを見せ始める古典部シリ-ズです。
良い出来の小説です。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/06/22
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この2作を並べて思いをはせると、互いが互いをクッキリとさせるようで、なにか味わい深いです。