満願 米澤穂信 (著) 新潮社、 読了
著者を知ったのは最近アニメの傑作、氷菓、の原作者として。
著者の本を読むのは初めてだが、アニメでその実力の程は窺い知っていた。
城山三郎の経済小説みたいな一編もあるが、そんな枠に留まらない。
アジアの資源開発を任された主人公の高い職業モラルが躊躇いもなく一線を越えるストーリーは自然でスリリング。
上司が部下を指導仕切れない話、そして巡り合わせの悪さ。
この話では高い尊いモラルではなく、身近に有るようなリアルな上司の行動が真相に自然に沿っていく。
山中の温泉宿奇談がホラーのようで有るような無いような。
都市伝説の事故現場取材でも同様その通りなのだが、手練れた作者は何れも結末まで読者を惹き付けて飽きさせることがない。
ミステリー手法にも見えるが、ミステリ以前に真面な小説になっているので読後感はとても充実したもの。
肩肘はらずに、ちゃんと人間の等身大の姿を描いているのだ。
等身大の姿が異形だった、ということもある。
長篇ばかりが流行る出版界で、村上春樹の近作とともに短編小説の素晴らしさを再確認させてくれた充実と魅力の一冊。
ラノベ作家?などと見過ごしていたら大損である。
儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫) 米澤穂信
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