ある生涯の七つの場所 辻邦生

辻邦生はもっと読まれてもいい作家。 遠藤周作や北杜夫と同世代の一昔前の作家だけれども、清廉で乾いた文体は西欧的で、日本文学特有の陰湿さや過剰な繊細さと無縁で、その描く世界は現代から歴史にわたって幅広く、語りから生まれるロマネスクな感じは独特なもの。 日本文学と一線を画した感じの文体は、今日で言えば村…