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海街ダイアリー、ライト姉妹

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃 (flowers コミックス) Kindle
   吉田秋生 (著)


こういう傑作コミックがあったんですね。
声を大にして語るのではなく、ああそうなんだよと心の腑に落ちる作品。

 

鎌倉での四姉妹物語。
四姉妹の誰がサブと言う訳でもなく、しいて言えば縦糸になるすずだろうか、それでも姉妹それぞれを描いて余すところがない。
最初の数話など、昔見た向田邦子のドラマを思わせるようだった。

 

欠落、喪失、そして病気、金、そして再現、再開、けっこう深いテーマもあるけどサラサラとしっかりと、コミカルだけど落ち着いて描く、画く。
大人が読める、いい作品です。


昨年末に完結したばかりの最終巻を読了しました。
その後すぐ、また最初の1巻からじっくりと読み直してしまいました。

 

 

      *  *  *   *  *  *  

 

ライト姉妹(1) 
ヒキコモリの妹を小卒で小説家にする姉と

無職の姉に小卒で小説家にされるヒキコモリの妹  (谷川ニコ)

 

作者はキャラの立て方、キャラを画で建てるのが上手い。
姉妹それぞれエロティックさの微妙な仕込み方。
ワタモテ主人公が身体の線を出しても、いつも見苦しいのとは対照的。
良いも悪いも作者にセンスが有るから描くことが出来るんでしょうね。

 

いろいろと不安を抱えて危なそうでも、タワーマンション住まい。
読者に心配をかけ過ぎず、読者に妬ませもしないような塩梅具合。


今日では普通の文学というのは良くも悪くも洗練され過ぎているので、小説や評論も何を書いてるのか分からない所がある。
そこで、此のコミックのように見も蓋もない言葉も付いた視点、ラノベから文学を遠く小さく見上げる俯瞰を魅力的な画によってシンプルに提出されると、今日の小説文学状況の全体がちょっと分かったような気にもなる。

 

もはや貧乏と悲惨と反社会だけでは読者の共感を得る事は困難なのだ。

 

むつかしい評みたいに書いたけどコミック中身は全然そんなことなくて、アニメやコミックやラノベやブンガクをネタにカラリカラカラと笑わせてくれます。

 

頭の隅や奥に凝り固まった文学アタマ? をほぐすのに効果ありの一冊です。

 

 

 

  

 

NECのタブレット LAVIE Tab E TE510/JAW 購入

3年前から使っていたタブレット、Nexus9がいよいよ使えなくなって来た。


とにかく最近はフリーズ、フリーズばかりの状態。
Kindleを読んでいても固まってしまう事しばしば。
アイコンを押しても反応しない、ネットのホームページやブログやツイッターが止まって動かない。

大阪人がイライラしてエレベーターのスイッチを連打するみたいにタブレット画面を連打する事はもはや常態。

たまに機嫌が良くなるのか、普通に動き出すと一安心。
電源入れてしばらくとか、しばらく放置した後などが具合悪い。

 

で、新しいタブレット買おうと思っていたのだが、最近はアンドロイドのタブレットがそれ程多く出ていない。
しかも良さそうのは大半が中国のHUAWEI 製。
一個人がどうのこうのでも無いが、バックドア等の情報漏洩は数年前から言われている。
一台同社のもの持っているが、やたらに個人情報へのアクセスを要求する同社管理ソフトには不信感があった。

 

そこで見つけたのがNECタブレット
店頭には一世代前しか無かったので取寄せて貰った。
丁度6日で店頭着の連絡あり。

 

店頭での他社比較も遜色なく、専門家レビューもamazonレビューも参考にして、世代前のものは中華管理ソフトが僅かに有ったとのことだが本機には無かった。

アンドロイド8で画面が1920✕の解析度、メモリ4ギガで64ギガの容量、とわかり易いスペックも良し。
128ギガまでのマイクロsdカード取り付け可能。


中華にラインを委託して造っていても或程度は製品管理出来ている、と思う。

 

使い始めて、タップすると必ず反応するという当たり前が極嬉しい。
いかにフリーズのストレスが大きかったか。
ボディの素材仕様はピアノ何とかでツルツルしている。
でもこれは手のひら肌にフイットするので取扱い感良し。
しかし微妙に斜めがある所に置いたりすると、そっとツルリと滑って下に落ちてしまうので要注意。


テキストを打ち込むのも速くなって入力もサクサク。
古いNexusではなかなか日本語辞書が反応せず困った。

 

中華の同程度スペックのものより数千円は高いだろうが、余計な不安感がないので同じ様に思う人には買いだとおもう。
安定した日本の家電のような使い心地に満足しています。

 


画面が少し大きくなっただけでコミックの読み心地がとても良くなった。
コミックには画面の大きさは大事だと改めて納得。

 

一時はiPad買おうかと迷っていたが、アプリやデータ移行の便利を考えた。
でもiPadは魅力的なので、これからはそちらも横目で注視していきたい。

 

 

PC Watch のレビュー
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/1167367.html

 

 

 

除籍本

Amazonマーケットブレイスで古本みていて、適当な価格の本がなくて、安いのは『可』レベルでちょっと汚れと傷みが強そうで、良さげなのは定価よりもやや高で、まあ狙っている本によってもその辺りの価格帯は違うんだけど。

 

古本で痛みが激しくても、実際に古本屋の店頭で自分で確かめることが出来れば、書込みや破れが多少あっても、そこそこで『まあこれでも良いか』とか思って買うことも有りそうだが、実物を見ないAmazonだとやや腰が引け気味になってしまう。

 

で1週間ほど前そんな風にAmazon見ていたら、『可』レベルの安いやつに<除籍本>、とあった。
あ、これはいいかもしれんと思ってオーダーしたら私的レベルでは『中古品 - 良い』レベルのOKのほんでした。

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<除籍本>とは図書館が公に廃棄した本です。
10年か何年かしらんけど、図書館によっても違うだろうけど図書館は公示して本を廃棄しますので希望の方はお持ち帰りください等々の処置をする。
<除籍本>とはその本。

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だからベストセラーとか人気作家の有名本なんかだったらボロボロになってるかもしれんが、一般にはあまり読まれない作家なら、そこそこのくたびれ具合だろうと推測でする。

 

図書館だったから透明ビニールカバーや分類記号シール、本のアイデンティティを示すバーコードなどが貼ってある。
そんなのが気に成らなければ、条件さえ合えば『可』レベルとされていても狙い目の本でしょう。

元図書館本として上記の様に加工されているから、Amazonでは自動的な感じで『可』レベルと分類されるのだとおもう。

 

たしか評論家の山本七平氏も除籍本の近世日本国民史を愛用していたとか読んだことがある。

 


ここまで古本漁りも便利に広範になってくると、ますます実店舗への足が遠のいてしまう。
もちろん実店舗でじっくり構えることは新刊と古本を問わず捨て難いもで、時として思わぬ本とのめぐり逢いがあるものだが、まずは足を運ばないことには話にならない。

 

まあいろいろと考えながら、右往左往してみます。

 

 

 

 ガラスの仮面、40数巻。

12月半ばから読み始め、分かっていたというものの読み切る覚悟をして置いて正解でした。


Kindle で巻を読み重ねて、あっという間に10,000円オーバーなんて初めての経験。
面白いもの楽しむなら、この程度の覚悟いるね。
酒代なら少し回数で1万突破なんてよくあるし。

 

狼少女なり二人の王女なり、佳境に入って来た辺りからの読者を引く力は尋常ではない。徹夜して読んでみたくなるが、そこは良いところで本を置いて、半日なり一日なりの時間を開けて又読み始めるのがジックリたっぷり楽しむ秘訣。

 

ずっと面白いのだが、マヤが芸能界入りして成功しつつもイジワルやらインボーを乗り越えていくあたり、この辺りが一番フツーの面白さで、つまり全巻通してなら比較して一番タイクツなあたり?
まあ最初1.2巻も比較そうかもしれない。


でも、この芸能界入りごたごたもちゃんと伏線になっていて、二人の王女オーディションから又またグイグイと引き込んでくれる。

 

実は終盤の紅天女あたりは面白くないのだろう、と思っていた。
樹の精霊で人とは思えなかった、なんてフレーズは能の亜流のようだし、第一『能』に判り易い面白さなど求めようもない。
だから詰まらんけどガラス仮面ファンだけが盛り上がってるのだろうと。

 

でもそうではありませんでしたね。
源三を語り部に起用して紅天女を叙述させていくのに先ず驚き。
源三はただの使用人キャラではなかった。


あとはいろいろとあるが、舞台の上から直接個人の人生までも巻き込んで、クラッシックに少女漫画スタイルなのに、剛腕にして読ませる強引さを持って読者をあれよあれよと振り回してくれる。

お嬢様の鷹宮紫織さまにも物語上インパクトのある役割を振られる。


このあたりストーリー御話とはいえ、1巻でマヤを住まわせていた中華料理屋といい、マヤは出前を忘れたり料理をバタバタ落としたり出前を届ける前に劇場に入り浸ったりと、中華屋のオヤジにはホント同情に絶えないのだが、そんな哀れさはありますね、ハナシとは言え。

 

全体通して、

演じる物語自体の面白さ。

演じることに格闘するactor達の面白さ。

舞台裏の思惑や図り事の面白さ。

芸能ジャーナル的に個人の裏側を覗き込む面白さ。

 

なによりも一つの物語が、演技の練習のために何度も繰り返されるのに、それでもなお本番として図太い物語そのものの面白さを表現して見せる筆力。

・・・このあたりのそれぞれの面白さが互いに絡み合って行く様についても考察してみたい気はあるが、ちょっと大変そう。

 

 

千万の人が語っているだろう本書について、今更感想もなにもないものだけど、やはりこのインパクトには何か書き留めたくなって、とりとめもなく綴ってしまいました。

 

 

 


 

虚構推理(1)月刊少年マガジンコミック Kindle 城平京・片瀬茶柴 (著

きわめて魅力的。


原作小説は未読だが、アニメ『絶園のテンペスト』のライターの城平京の作ということで興味を持って手に取った。


異界に足を踏み入れたらしいガールmeetsボーイ、という出だしで、その普通な設定でも捻りがあってフツーに魅力的なのだが、元々の原作小説はなんと <第12回本格ミステリ大賞> を受賞している。


では、これはミステリーなのかと言えば、ちょっと言葉に詰まる。
1巻ではその景色は見えないが、事件解決ものみたいに見えて、しだいに結構どっぷりと一事件に関わる。
そして中盤以降から、ああなるほどと、確かに狭義のミステリではないがミステリとしての確かな骨格がある。


このじっくりと来る感じは、これは小説ならではのものだとか。
6巻読み越して終わってみて、これはスゴかった唸るものが有りました。
一般小説の深みも幅も知ったうえで、ラノベやアニメの文法も押えつつ、ちょっと無いような作品に出来上がっています。

 

ヒロインの岩永琴子が魅力的、解説も紹介も何も読まずに1巻を読むのが1番楽しめると思う。
設定を徐々に開示していく手腕はなかなかのもので1巻はその世界観プロローグとして楽しく、1巻ラスト近くに本筋にかかわる些細なバトル、よたよたとした岩永琴子のばとるもあって是又コミック化の魅力発揮のもの。

 

 

・・・

おそらく原作小説では、ミステリ骨格の細密さがあるのだろうが、コミック作画は原作有りとは感じさせない、全く不足の無い出来。

 

お金持ちの令嬢とありふれた設定でも、失ったものに余り気を留めない、結構大きなものを無くしても気にしない、一般アニメのヒロイン達に比しても負けない可愛さも持ちつつも実は肉食系頭脳派で会話も楽しい。

 

日程未定ですがアニメ化も予定されている。
設定上ちょっと余りアニメ作画されていないような画も多分もちょっとだけあるので、そんなのも楽しみです。


いままで知らなかったのですが、そんな新しいヒロインが誕生していました。

これからの私的大注目です。 

虚構推理(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

虚構推理(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

 
虚構推理 (講談社文庫)

虚構推理 (講談社文庫)

 

 

コミック虚構推理、冒頭86ページ試し読み。

http://www.magazine-r.co/comics/kyokosuiri/

 

 

たまたまですが、裏世界ピクニックといい都市伝説に関係する今の本を読んで面白かったことに変なカンドーあり。

 

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA) 宮澤伊織。 気に入りました。

 早川文庫のラノベってどんなんだろう、みたいノリで読んだのだけど面白い。

似ていないけど、『遠野物語』が東北ローカルに語り継がれる古潭をベースにしたように、文章やネットで今語られてきている都市伝説をベースに異世界との接触を描く。

 

異世界ではなく、ここでは『うら』、『裏世界』と呼ばれるが、普通のラノベのように判り易い冒険や失敗が始まるのではなく、理解できない世界との関わりを描き、恐怖を媒介とするその在り方の説明は合理的てユニーク。

うまく説明されていますし、普通のように見えて変幻する世界は魅力的です。

 

『 「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が隣合わせで謎だらけの裏世界。

研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――  気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル! 』

 

軽いノリに見えて結構充実しています。

後書きで引用した実話?の説明もありますが、完全に話のファクターして消化して物語に組み入れられて昇華されていますので、ネタバレの白け感などは全くありません。

 

現実であって現実でない『裏』世界も魅力的ですが、都市伝説や実話語りをそのまま生かした細部にも魅かれるものが有ります。

異世界への扉とか、エレベーターで異界へ行く手段とか。

 

たまに派手なバトル、でないようなバトル?もスケール大きくあって、作者の読ませる手腕はなかなかのものです。

 

世の片隅で湿って埋もれた伝説や怪談をもとにしているのに、なかなか先の読めない展開で、各短編ごとにゆったりとジックリと楽しめました。

 

 

なるほどハヤカワはこういうラノベで来るのか、流石ですね、とか思ったりしました。

1巻2巻と読みましたので3巻に入ります。

 

 

サントリーの新プレミアムウイスキー、モルト3種。

BARで聞いてきた話、飲んでみた話。


さいきんサントリーが山崎、白州、知多の新しいブレンドを造った。
ただし一般には流通しない、していない。
多分オーセンテッイクなbarあたりに卸している。

 

モルト不足の折で普通のそれらも流通不足、特にbarに行って山崎白州も飲みにくい高くなってしまうというので色々と具合が悪いというのも一因か。
一般に流通させると買占め率が高くなってしまい、結果流通しない。
そこでbarに限って下ろすとい一策。

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飲んでみたのは白州。
崩した『遊』の文字のボトル。
度数はなんと59度。
とても白州には見えない。

 

飲んでみる、というか舐めてみる。
ジンストレートより強いのに滑らか。
心地よい。
詳しく説明する語彙はない。


水で少し割る。
ふわーっとおいしさが拡がったような華やかさ。
うまい、と声に出る。

 

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三つ並んだ箱は山崎、白州、知多のそれら。

順不同。

山崎と知多は度数49度。

 

大分酔って聞いた話なので色々事実誤認があるかも。

だいたいの話、ということで。

 

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あと何年かしたら中国のモルトウイスキーバブルが弾けて、普通の山崎白州がフツーに飲めるようになる、・・・なってほしいものです。

 

追記。

Amazonで売ってました。 

 

サントリー社、のlink。

『※本商品は料飲店様向けに数量限定で発売するものです。』

 

ジョニーウォーカー ダブルブラック おいしい。

久し振りの個人的にはヒット作。

といっても昔の味に出会えたみたいな、思い入の感も強いかもしれない。

 

平成のはじめ、今ほど酒を飲まなかったけどフトした弾みで、たしかマラソン大会の帰りだったと思うけどジョニ黒、普通のジョニーウォーカー黒ラベルを買った。

これを家でちびちびと水割りで飲んでいたのだけど、なんだか美味しくて変に感心した記憶があった。

 

20年くらい経って、そこそこ酒を飲むようになってジョニ黒を飲むことも有ったのだけれど旨いけど何か違う、昔のような味ではない。

 

記憶では舌に沈み込むような味で、普通のウイスキーのような舌を刺すような、もしくは舌をキックするような味ではなくて、深々と沈々と舌の中に沈み込んで鈍い存在感を示すような、そんな記憶だった。

 

たまにbarで年代物の古いジョニ黒、デッドストックのジョニ黒を飲むことがあると、ああこういう味だったと思ったりした。

製造が古くて売れ残ったりしていたジョニ黒や、会社役員等の個人宅で中元歳暮の酒が死蔵されているものが、何かの折に専門の流通経路に乗ったりするらしい。

 

そしてやっと、昨年年末にこのジョニーウォーカー ダブルブラックを買ったのだが、ああこれだこれだと腑に落ちた次第。

 

Bar に置いてるオールドボトルなんかはやっぱり少し高いし、気軽に飲めない。

宅に置いてじっくりと、昔に染み付いた旨い酒を飲めるのは愉しいものです。

 

 

ただ、酒はやはり好みで嗜好品なので、こういうスモーキーと言われる味わいが人に受けるかどうかは分からない。

変な例えだけど、黒い色ブラックを見て何も色がついてないじゃんと反発するみたいな?

 

まあ、個人の感想でした。

 

 

米澤穂信の新作、本と鍵の季節– 2018/12/14  読んだ。

『 放課後の図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。
爽やかでほんのりビターな・・・ 』

 

こういう設定なら、古典部シリーズとか期間限定シリズとかで書けばいいのにとか、氏のファンなのでつい思ってみたりもしたが、シリーズものというものは続くにつれて設定が色々と積み重なって煮詰まってくるので、なかなかフリーハンドの自由さもないんだろうなとか思ってた。

 

 で読んでみてだが、なるほど是れはオレキホータロウやチタンダえるの周辺では書けない。氏の学園ものシリーズの読者に対しても多分隙を狙ってきたのだろう。
なるほどこう来るのか、こう来ましたか・・・です。

 

 学園ものに違いは無くてサクサク読めるのだけれど、全体印象として氏の一般小説のようなトーンも私には感じられた。

 1話のなんというかある種インパクトが、これで彼彼女らはどうなっていくんだろうではなくて、1話そのものがある種伏線であったというか、このあたりは文章も造りも相変わらず巧いものです。

 

本と鍵の季節 (単行本)

本と鍵の季節 (単行本)

 

 

恒川 光太郎 ・スタープレイヤー よんで

掃いて捨てるほどある異世界転生の話しでも、才能がある人が書けばこうなるのかと感心させられた作品。

 

≪ 路上くじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。

そこで10の願いが叶えられる
 「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、

  人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
  折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて・・・ ≫

 

ラノベ系なろう系のを多々読んだ訳でもなく同系統アニメを十分よく見た訳でもないのだが、これ読んでみてやはりちょっと違う、とは思った。

 

話は最初からサクサク進み、その手際も商業作家だけあるものなのだが、最初にゾロリと来たのが主人公の過去に関わるリアリズム系インパクト。
なるほど、れっきとした作家らしくこう来るかと。

 

それでこの小説はこう攻めて来るのかと思っていたら、それも有りつつ踏まえつつ、人の願いが回数限定で叶う世界の楽しさ難しさを描きながら、ファンシーが政治や政争にまで及ぼうとして、遂には結構に相当なファンタジーがドカンバカンと炸裂する。

 

現実の代わりにダラダラと異世界でじゃれたりボーケンしたりする話も、内容によってはずっと浸っていたいほど楽しくて心地良いものだが、お約束ごとだけでは無い自由に奔放でもリアルな小説世界、確固とした世界を鮮やかに描き切ったものを読まさされると、改めて小説自体の楽しみの深さを味わえたと、そんな風にも思いました。


とても面白かったです。 

スタープレイヤー (角川文庫)

スタープレイヤー (角川文庫)

 
 
 

 

 

 

ヘブンメイカー (角川文庫)

ヘブンメイカー (角川文庫)

 

 

ガラスの仮面  強力なコンテンツを前にして.

 ひと月前、ガラスの仮面kindle化されたとの事だったので、少しの間は1巻から3巻は0円だったのでゼロ円購入。

 

はじめて読んだのは20年くらい前だったか、よく覚えていないが、その頃すこし通っていた小さな病院の待合室に巻が並べてあった。

20巻程度かも少し前か、そのくらいまで読み進めた。

病の不安をちょっと忘れ去れるくらいのオモシロサ、は記憶に残った。

 

少女マンガをふと手に取ったわけでは無い。

たぶん少女マンガをふと手に取ったりはしない、小説家の絶賛の文章が記憶にあったからだった。

当時、少し前に新潮社広告雑誌『波』に連載していた小林信彦の小説世界のロビンソン、体験的小説論と名打ってのエッセイ。

ここで小説でないのにもかかわらず、少女マンガのガラスの仮面が絶賛言及されていた。

その記憶が強くあったのだとおもう。

 

無料雑誌の『波』は、郵送料を送れば定期的に毎月家に送ってくれる。

私は数十年そうしている。

大きな本屋には置いてあるから、見てみて読んでみて検討するのも、そういうお取り寄せは文学好きには選択嗜好の一つだとおもう。

 

無料巻からやっぱり有料kindle購入にズバズバ進んで、当時読んだあのそのエッセイも読み返したくなって、これもアマゾンで購入。

いまは内容をわずかに改め、

『面白い小説を見つけるために』 小林 信彦 (著、 となっていた。

 

この本は、コアな文学から大衆小説、エンターテインメントにわたって広く深くプレーンな視点で面白さを見据えて評論していった文章で、それは当時としては珍しかったし、図らずも現在の平坦な文学状況、いや活字媒体よみもの状況を先取りした、もしくはもたらすのに一役買った優れたエッセイ。

 

ガラスの仮面については後半、小説ではないので一頁少し触れられているだけだが、まあそれでも此の本のバランスでは言えばpointをクッキリ示した印象。

絶賛と感嘆のなかに一言程度キビシイコトバがあったのを見つけたのは、これは再読のよろこび。

 

コミックをkindleで読み始めて、なんせ面白いから読み進み過ぎるのも具合悪い、12月はいろいろ面白そうな他の書物新刊もおおいし、楽しむには早いペースにしろ一定の日にち間隔が必要だろうと、ガラス仮面は1日1巻以上は購入しないと決めていて、そんな感じで読み進めていたのだが、奇跡の人舞台が始まった辺りではあえなくその基準も破れて読みふけり、今はテレビドラマ突入でちょっと現在は落ち着いているのだが、これからどう振り回してくれるのか楽しみにしている、そんなところです。

 

ガラスの仮面 1

ガラスの仮面 1

 

  

ガラスの仮面 2

ガラスの仮面 2

 

  

ガラスの仮面 3

ガラスの仮面 3

 

  

面白い小説を見つけるために (知恵の森文庫)

面白い小説を見つけるために (知恵の森文庫)

 

 

ライウイスキー

 ライ麦で作ったウイスキー

普通のバーボンでもライ麦は使っているが『ライ麦』比重に特化してつくっているもの、と理解している。

 

海外ドラマで見かけたウイスキーを飲んでみようかと、少し探していたのだが日本には正規輸入はされていない様でAmazon検索でも見当たらない。

 

先日ふとbarのマスターにこんな酒知ってる?と聞いたところ、見たことの無い酒ですがライウイスキーのようだしライウイスキーならこんなのが、と教えてくれたのが写真のリッテンハウス。

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禁酒法あたりの時代の製法を守っていて、アルコール度数が50度。

はじめて飲むのでストレートがいいのだが、その時の気分として強いのがあれだったのでハイボールにしてもらった。

 

飲んで驚いた。

舌や口中のアタリがあまりない。

特別飲みやすくするために薄めて調整するようなbarではない。

ジャックダニエルのようなはっきりした甘さのような個性は無く、深々静々と口の奥に広がってた行くような、ちょっと意外な口当たりの良さ。

 

多分、ストレートで飲んでも比較的飲みやすいのだろう、ヒカクテキだが。

 

海外ドラマで飲まれていたのは Whistle Pig Rye Whiskey というウイスキー

ブレイキングバットという海外ドラマで刑事役キャラが、異動になった上司を送るときに職場でグビグビと飲む酒だったので、そのカジュアルな感じから日本で言うと角瓶かだるまクラスの酒かなと思っていたが、1万円くらいのプレミアムなウイスキーであった。

いい酒を用意して一緒に飲んで送り出したかったんですね。

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大きな酒屋に行ったら当然売っているものと思っていたら全く見当たりませんでした。

 

英字でグーグル検索かけるとメーカーのサイトが出てきます。

プレミアムな感じです。

 

世の中は贅沢志向でモルトにトレンドが振れていますが、そこから将来バーボンやライに振れることが、これから有るかもしれません。

そうしたらこんな酒も並行輸入されるかも?しれん。 

 

バッキー井上 『いっとかなあかん店 京都』

情報収集のためだけでなく、食べログや飲食街の情報誌を読むのは、何かしら飲みに行ったり食べに行ったりした楽しげな空気や気分を感じたい、そんなのが有ると思う。

 

京都グルメのー冊のような佇まいの本だが、それはそれとして間違いないのだけれども、店舗の物理的数値や決まり文句の美味しい彼是以外の、自分と酒の今や過去を語る饒舌が溢れて、数々写真や頁見開きで臨場感ある魅力的なショットの幾多有るにも関わらず、文章は負けていない。

 

普通のエリアグルメ本とは一線を画した、人や街や店の姿を画いた本。
著者と店や街との立ち位置を例えて見るなら、山口瞳の行きつけの店に近いか、そんなかもか。


何も文章が似ている訳でも小説らしさとか山口瞳ばり人情味とかがこの本にある訳でもない。
あれほど密接でも濃密では無いし、あっさりしてフットワークも軽いが、人や飲む場所との距離感がちょっと似ているかなと、思ったりした次第。

 

確かに、お店紹介に自分語りは要らないし過去語りもなんじゃらほいだろうけど、ただその店に自分がいて何度も幾夜も訪れていて私の年月に徘徊経路の一つにもなっている様が刻まれているのだったら、私を語ることがその店を間接的に間接照明のように語っていてもおかしくはないし、事実そのとおりの一冊に仕上がっている。

 

お手軽な食べログレビューのグルメで、一回行って食べて見るだけの一回の経験値がいくら豊富であっても、それらとこの本を同列に扱うべきものではないだろう。

 

この本には著者の写真、顔や表情もよく写っている。
目力の強そうな、ちょっと圧力のある瞳だが、勝手な推測を云えばこれは彼が圧力キャラなんぞではなくて、酒を呑みすぎて呆然として目を見開いている状態これが余りに永く幾夜とも続いているので、酒場に行くと自動的もしくはもう普段からそんな顔に成ってしまったのだと、テキトーかつ無責任に推測をする。


本書のなり立ちについて思っていたのは、関西雑誌Meets Regional 連載のマトメと抽出かなと。
でも、そうではなくて全国グルメ誌dancyu のマトメ。

 

dancyu に連載されていたとは知らなかった。
でも同じ店のことを書けば同じことばが紡ぎ出されるのは自然の生業。
馴染みがあってリズムのある文章は、紙面のあちらこちらとか雑誌単行本の違いになど左右されない。
dancyu編集のライターを選ぶ目は確かなようだ。

 

いっとかなあかん店 京都

いっとかなあかん店 京都

 

 

 

 

化物・わたもて・鉄鼠、コミック3点.

[西尾維新, 大暮維人]化物語(3)

 

西尾維新化物語というのは新しい古典になったんだと、つくづく思わされた。
アニメ化によって大きく開花して、サブカル世代の常識めいた如くの周知徹底が、アニメと原作小説の二つを原作として、大暮維人は新たに深く異なった陰影を見せてコミカライズして見せた。

 

大暮維人は良い原作に巡り合えたものだ、もしくは、大暮オリジナルを捨てて果敢にも二番煎じ三番煎じの汚名や罵詈雑言が降り掛かるリスクを取って、その中に己の世界を完成させて見せたものだと、感服しました。

 

3巻では八九寺真宵の哀愁ある表情がとても印象的、いろんな顔を描けてこその本物の画力というものです。

 

この分だったら化物語は新しき古典として、歌舞伎化や実写化や本コミックのアニメ化なんかも当然ありそうな気がしたりしてきました。 

 


私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(13) 谷川ニコ.

 

ネットでポコポコ評判になっていたので、途中から作風が変わっていったとの事だったのでシリーズ半ばから読み始めたのだが、結局あとで最初の巻もよんでしまった。

アニメ化もされていたが内容的に自虐が過ぎてるみたいな印象だったし、あの絵だしその頃は読む気にも見る気にもなれなかった。

 

今回読み切って、巻はじめごろの自虐あるあるかもを頁一杯に叩きつけるような画風ではなく、シリーズ途中から4コマ漫画にも似た着実なテンポと画風に変わって来る。

 

勝手な推測だけど、アニメ化で予想外に人気が出てしまったので、ホントは数巻で終らせるはずだったのが、この主人公をどう生かしていけば好いのだろうかと、著者は結構悩み考えた挙句のロングスパンの群像劇・サブキャラ設定になったのではないか。

 

修学旅行編が旅行ドタバタで終るイベントではなくて新キャラ紹介のプロローグでもあったことは巻を見返して観ると良く判る。
実際、加藤さん初登場も新幹線隣席だった。

 

群像劇の描き方もうまい、修学旅行で同室になった無口不愛想な田村さんが友達からのラインを無視していたら部屋にやってきてアレコレ。
何があったのか描かないそれだけだけど、後々になって友人女子が田村さんを裏切って云々というモノローグを入れて、そこは飛んでもないシーンなのだが、背景で陰の様にして描くことなく話をバックに仕込んでいるのは中々巧妙です。


この手のものが結構あってストーリーに不思議に豊かな膨らみを見せます。

 

ネットで月2回程の連載ですが、なかなか脂がのっているような面白さがトテモ乗っいるコミックです。

( 描いてないとおもってたが、田村さんの件は8巻69の階段場面で『南さん達に誘われて』『断ってきてよ』とさり気無く描かれてました ) 

 


鉄鼠の檻(5) 京極夏彦 志水アキ (著)

 

好きなシリーズなのだが、やはりこの鉄鼠檻は難しいかと思っていたが、最終巻になって見事に雪崩落してマトメてくれました。

 

原作小説の饒舌な衒学、教養の奔放な遊戯、それが会話や演説や謎解きに言葉コトバとしてたっぷりあるのだが、コミックでは言葉を大胆に削りに削って、空間と間合いで物語世界を見せたのだか凄いもの。
原作ファンとして楽しめました。